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行方不明者の相続における諸規定をご紹介します。

    11行方不明者の相続

    ] 日本語 [

    ميراث المفقود

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    11-行方不明者の相続

    ● 行方不明者とは:その消息が絶たれ、生存しているかどうか不明な者のことです。

    ● 行方不明者の法規定:

     行方不明者には2つの可能性があります:つまり、生きているか死んでいるかです。そしてそのいずれの場合にも、特有の法規定が適用されます。つまり行方不明者の妻に関する法規定[1]や、行方不明者の遺産相続、あるいは行方不明者からの遺産相続などにおける法規定において、相違点が出てくるのです。

     そしてもし生死どちらの判断もつかないような場合には、行方不明者を探索する機会として消息確認のための一定期間が設けられなければなりません。そしてその期間の設定は、行方不明者とその関係者の福利を考慮に入れた統治者や裁判官[2]の判断に任されます。

    ● 行方不明者の状態:

    1-行方不明者が被相続人(相続を与える側)である場合、もし消息確認のための猶予期間が終了しても消息が掴めないようであれば、その者は死亡したと見なします。そしてその者が自分のものとして所有する財産と、また‐もしあったのなら‐その者が行方不明中に相続し保留されていた遺産を、相続人の間で分配します。尚相続人は行方不明者に死亡の裁定が下された時点まで存命中であった者であり、消息確認のための猶予期間中に他界した者は相続人とは見なされません。

    2-もし行方不明者が相続人(相続を受ける側)である場合、もし他に相続人がいなければその者の相続分は消息が確認されるか、あるいは消息確認のための猶予期間が終了するまでその者のために保留されます。

    しかしもし他の相続人がおり、遺産の分配を所望した場合は、全相続者の相続分がより少ない可能性に基づいて遺産分配をし、残余分は事が明らかになるその時まで保留しておきます。そしてもし生存していたらその相続分を取り、そうではなかったらそれは他の相続人に分配されることになります。

    つまりまず行方不明者が生存中であると想定して遺産分配の計算をし、次いで死亡してしまったと想定して遺産分配の計算をします。そしてその2つの可能性における相続分において差額が生じる相続人は、より自分の相続分が少ない方の可能性に基づいて相続します。もしいずれの場合も相続分に差額が生じないような相続人は、その相続分を全て手に入れます。一方いずれかの場合にしか相続権がないような者である場合、何も相続しません。そして、残余分は事が明らかになるその時まで保留しておくのです。

    [1] 訳者注:「6-婚姻の章」の「⑧イッダ(待婚期間)」の項を参照のこと。

    [2] 訳者注:イスラーム法で裁く統治者と裁判官のことです。そのような機関が存在しない非ムスリム国や地域に居住するムスリムは、そこにおけるイスラーム的権威である学者やイマームなどに依拠することになります。