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離婚にはイスラーム法に則ったスンナの離婚と、それに反するビドゥアの離婚があります。

    離婚②

    スンナの離婚とビドゥアの離婚

    ] 日本語 [

    الطلاق2:الطلاق السني والبدعي

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    スンナの離婚とビドゥアの離婚

    ● スンナの離婚の形:

    1-スンナの離婚とは:以下のような条件を満たしている離婚の形です:

    ① 夫がその妻と既に床入りを済ませていること。

    ② 妻が清浄な‐つまり月経や産後の出血がない‐状態にある時に離婚宣告すること。

    ③ 妻が前回の月経を終えてから性交していないこと。

    ④ 離婚宣告は1度だけ行うこと。

     妻は離婚宣告された後にイッダ(待婚期間)‐月経を3回迎える期間‐に入りますが、その間であれば、夫は彼女と復縁することが出来ます。

     そして復縁することなくイッダが終了したら、離婚が確定します。そして彼らがまたよりを戻したい時には、新たな契約とマハル(贈与財)をもって婚姻手続きを行わなければなりません。イッダ中に復縁すれば、夫婦は何事もなく以前通りの関係に戻ります。

     また上記のような形で2回目の離婚宣告をした場合も、イッダ中に復縁すれば夫婦関係は戻ります。復縁することなくイッダが終了すれば離婚は成立し、そして彼らがまたよりを戻したい時には新たな契約とマハル(贈与財)をもって婚姻手続きを行わなければなりません。

     一方3回目の離婚宣告が行われたら、その時点でその妻は完全離婚されたことになります。

     元夫婦が互いによりを戻したい場合、元妻は彼以外の別の男性と正当な婚姻を済ませてからでなければなりません[1]

     以上の離婚形式と段階が、離婚宣告の数および期間においてスンナに基づいた離婚の方法です。

    2-またスンナの離婚の別の形として:夫が妊娠の判明した妻に、離婚宣告を1度通達すること、あるいは閉経後の女性など月経のない妻に対しては時期を考慮することなく離婚宣告するというものがあります。

      至高のアッラーはこう仰られました:-離婚宣告は2回まで(何事もなく復縁の取り返しがつく)。そして(離婚宣告をした後は、彼女を)当然の善行として引き留めるか、あるいは懇ろに(待婚期間が終わるまで待ち、彼女を)解き放ってやるのだ…,

    それから至高のアッラーはこう仰られました:-そして(3回目の)離婚宣告をしたら、彼女は別の夫と結婚するまでそれ以後は(元夫との再婚に関して)合法ではない。そしてもし彼女が(別の夫と結婚して床入りした後)離婚された場合、両者(彼女と元夫)にアッラーの掟を順守出来る確信があるのなら、再婚することに支障はない。そしてこれこそが(アッラーが、その命を真実であると)知る民につまびらかにされるところの、アッラーの掟なのである。,(クルアーン2:229-230)

    そして離婚が成立して別離する際には、元夫が元妻に対し両者の状況に見合った適当な贈り物を与えることがスンナです。そうすることは彼女への慰安と、彼女に対する義務の一部を遂行することにつながるでしょう。

    崇高なるアッラーは仰られました:-そして離婚した妻には、適切な贈り物を持たせるのだ。それこそがタクワー[2]の徒の義務である。,(クルアーン2:241)

    ● ビドゥア[3]の離婚の形:

    ビドゥアの離婚とは:イスラーム法に反した形の離婚です。これには2種類あります:

    1-時間的観点からのビドゥアの離婚:例えば妻の月経時や出産後の出血が終了していないような時、または彼女が清浄な状態にはあっても最後の月経後に性交してしまっているような場合に離婚宣告をすることです。

    この離婚宣告は有効ではありますが、非合法です。このようなことを行う者は罪深い者であり、その宣告が3回目のものでない限りにおいて、彼女と復縁しなければなりません。

    そして月経や出産後の出血中にある妻と復縁したら、彼女が清浄な状態になるまで待ちます。そして次の月経が来て、その後再び清浄な状態になったら、改めて‐あくまでそれを望むのであれば‐離婚宣告します。

    一方妻が清浄な状態にはあっても最後の月経後に性交してしまっているような状態で離婚宣告を言い渡してしまった者は、彼女の次の月経が来るまで待ちます。そしてそれが終了したら、改めて‐あくまでそれを望むのであれば‐離婚宣告します。

    1-イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、彼はその妻の月経中に彼女に離婚宣告をしましたが、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はそのことをウマルから耳にするとこう言いました:「彼に命じて、妻とよりを戻させよ。そして彼女が清浄な状態にある時か、あるいは妊娠中に離婚の通告をするようにさせるのだ。」(ムスリムの伝承[4])。

    2-イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、彼はその妻の月経中に彼女に離婚宣告をしましたが、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はそのことについてウマルから訊ねられるとこう言いました:「彼に命じて、妻とよりを戻させよ。そして彼女が清浄な状態に戻り、また次の月経を迎え、そして更にそれが終了して再び清浄な状態になったら改めて離婚の通告をするか、あるいは彼女を自分の元に置き留めるかするのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[5]

     2-数的観点からのビドゥアの離婚:「あなたを離婚する。あなたを離婚する。あなたを離婚する」という風に3つの離婚宣告の言葉を一遍に言ってしまったり、あるいは「あなたを3回離婚する」という風に言ったりするようなことです。

    このような方法の離婚は有効ではありますが非合法であり、このようなことを行う者は罪深い者です。

    妻が清浄な状態にある1期間に3つの離婚宣告の言葉を一遍に口にしたり、あるいは「あなたを3回離婚する」などと通告したりした場合、その者はその行いによって罪を犯し、かつそれらはまとめて1回の離婚宣告であると見なされます。

    妻が年少か年配ゆえに月経がなかったり、あるいはまだ床入りしていなかったりした場合、離婚宣告の方法にスンナもビドゥアもありません。望む時に離婚宣告をすることが出来ます。

    [1] 訳者注:「正当な婚姻」とは、ただ単に元夫と再婚するためという意図ではなくきちんとした結婚の意志をもって別の男性と結婚し、そして床入りを済ますことを指しています。尚元夫とは再婚出来ない状態にある女性を元夫と再婚出来る状態にさせるためゆえに彼女と結婚し、床入りした後に離婚するというような策略(解除婚)は禁止されています。

    [2] 訳者注:「タクワー」は「自らを守る」という動詞の名詞形。つまりアッラーを畏れ、またそのお怒りと懲罰につながるような行い‐つまりかれが命じられたことに反したり、あるいは禁じられた事柄を犯したりすることなど‐を避けることで、自らの身をアッラーのお怒りや懲罰から守ることを意味します。

    [3] 訳者注:ここで言う「ビドゥア」とは、法的典拠にそぐわないような物事のことで、預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道である「スンナ」の反対語です。

    [4] サヒーフ・ムスリム(1471)。

    [5] サヒーフ・アル=ブハーリー(5251)、サヒーフ・ムスリム(1471)。