屠殺
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屠殺
] 日本語 [
الذكاة
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
屠殺[1]
● 屠殺とは:食用可能な陸上生物を、頚動脈と頚静脈の両方、あるいはその一方を含む喉と食道を切断することにより屠ること、あるいは逃走中の動物のように取り押さえて屠殺するのが不可能なものを、殺害することです。屠殺の方法には喉を横に切るものと、後述するナハルの2つの形があります。
● 屠殺の仕方:
ラクダに関しては、前左足を結び、立たせたままの状態でナハルという方法で屠るのがスンナ[2]です。つまり鋭い刃物で、首の付け根と胸の間にある窪んだ箇所を突くやり方です。
一方牛や羊などは左半身を下にして横たわらせて、刃物でその喉を切ります。
尚、動物を射的の的にしたりすることは禁じられています。
● 動物の胎内にいる胎児は、その母親を屠ることで屠られたと見なされます。もしその際に生きたまま出てきたら、その時は規定の方法で屠らなければ食用を禁じられます。
● 正しい屠殺の条件:
1-屠殺をする者の適性:つまり性別を問わず正常な理性を有するムスリム、あるいは啓典の民(ユダヤ教徒かキリスト教徒)であることです。それゆえ酩酊状態にある者や精神に変調をきたしている者、啓典の民以外の非ムスリムの屠ったものは非合法です。
2-道具:血液を流出させる鋭利な道具のことですが、歯や爪などは非合法です。
3-喉と食道の切断により、血液を排出させること。頚動脈と頚静脈の両方とも切断することが、最善の形です。
4-屠殺の際に「アッラーの御名において」と唱えること。もしうっかり忘れてしまってもその合法性に支障はありませんが、故意に放棄した場合は食用を禁止されます。
5-聖域での狩猟物や、ムフリム[3]にとっての狩猟物など、アッラーの権利においてその狩猟が禁じられているものではないこと。
● 死体の種類:
絞殺や殴打、電気ショックや熱湯、またガスによる窒息などによって死んだ動物は非合法であり、その食用を禁じられます。このような形で死んだ生き物の肉は鬱血し、その食用は有害です。またスンナに反した形で魂を失ったものであり、自然死した死体と同様です。
● 啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)の屠殺したもの:
1-啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)が屠殺したものは合法で、食用可能です。至高のアッラーはこう仰られました:-この日、あなた方にはよき物が許された。そして啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)の屠殺した物はあなた方にとって合法であり、あなた方の屠殺した物は彼らにとっても合法なのである。,(クルアーン5:5)
2-もし啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)が屠殺したものが絞殺や電気ショックなどイスラーム法に沿わない形で屠られたということを知った場合、その食用は禁じられます。一方啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)以外の非ムスリムの屠ったものは、そもそもが非合法です。
● 取り押さえて屠殺するのが不可能な生き物に関して:
取り押さえて屠殺するのが不可能な狩猟物や動物は、それがどこであろうとその体の一部を負傷させてその命を奪うことが屠殺の代わりとなります。
尚、動物の無益な殺生は禁じられます。
● ムスリムが啓典の民の屠殺した物を食べる時:
ムスリムは、啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)が屠殺の際にアッラーの御名を唱えたことを知った場合、その食用を合法とされます。そうしなかったことを知っている場合、その食用は許されません。
しかし啓典の民がいかに屠殺したのか不明な状態に留まっている場合は、その食用が合法となります。それはその本質が合法性に立脚しているためであり、屠殺の方法について訊ねたり調査する必要もありません。むしろ質問も調査もしないでおいた方が望ましいでしょう。
● きちんと屠殺出来る動物は、屠殺以外の方法では食用が合法とはなりません。但しイナゴと魚類、水の中以外では生息不可能な水生生物はその限りではなく、屠殺抜きで食用とすることが出来ます。
● 狩猟物の食用:
合法な陸上生物でも鳥類でも、次の2つの条件を満たしていなければ食用を許されません:①イスラーム法に則った屠殺、②その際にアッラーの御名を唱えること。
● 他人のために動物を屠ること:
家畜やその他の食用動物を屠り、それを誰か故人の報奨となるべくサダカ(施し)することは合法です。
しかしその屠殺の理由がその故人の神聖視とか、あるいは彼自身に対する奉仕ゆえなどである場合、その行為は大シルク[4]と見なされます。そのような動物の肉は本人であれ他人であれ、食することが禁じられます。
● 屠殺や殺生における善行:
1-屠殺は動物を苦しめないよう、鋭利な刃物を使用します。
2-他の家畜が怖がらないよう、それらの目の前で刃物を研いだり、屠殺したりしないようにします。
3-動物が息絶える前に首の骨を折ったり、皮を剥いだり、切断したりしないようにします。
4-ラクダに関してはナハル[5]の方法で屠殺し、それ以外のものは通常のやり方で屠ります[6]。
シャッダード・ブン・アウス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は、アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)から2つのことを教えてもらった。(それは彼のこの言葉に含まれているものである:)“アッラーは全てにおいて善行をお命じになられた。それで殺生する時にはよき殺生をし、屠殺する時にもよき屠殺をするのだ。刃物を研ぎ、犠牲(が感じる痛み)を和らげよ。”」(ムスリムの伝承[7])
尚屠殺する生き物はキブラ(カアバ神殿のあるマッカの方向)に向けるようにし、アッラーの御名に言及する際にはタクビールを付け加え、「ビスミッラーヒ・ワッラーフ・アクバル(アッラーの御名において。アッラーは偉大なり)」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[8])と言うようにします。
[1] 訳者注:ここで取り上げる「屠殺」とは、あくまでイスラーム法に則ったもののことです。
[2] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。
[3] 訳者注:「ムフリム」とは、ハッジ、あるいはウムラの諸行の開始を意図した者のことです。
[4] 訳者注:詳しくは「タウヒードとイーマーン」の章のシルクの項を参照のこと。
[5] 訳者注:前左足を結び、立たせたままの状態で、首の付け根と胸の間にある窪んだ箇所を突く屠殺方法です。ラクダを屠殺する時には、このやり方がスンナとなります。
[6] 訳者注:詳しくは前述の「屠殺の仕方」を参照のこと。
[7] サヒーフ・ムスリム(1955)。
[8] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(2810)、スナン・アッ=ティルミズィー(1521)。