×
奴隷はイスラームが到来する前の昔から既に存在していましたが、それを除去するための多くの扉を開いたのがイスラームです。そしてイスラームは、彼らを屈辱的な隷属状態から解放するための多くの機会を提供しています。

    奴隷の解放

    ] 日本語 [

    العتق

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    26-奴隷の解放

    ● 奴隷の解放とは:奴隷身分にある人間を、その状態から解放することです。

    ● イスラームにおける自由民と奴隷:

    イスラームにおいて全ての者は自由民であり、人が奴隷身分に陥る原因はただ1つしか存在しません。それはつまり非ムスリムがムスリムとの戦いの中で、捕虜となった場合です。

    彼らを屈辱的な隷属状態から解放するために、多くの機会が設けられました。例を挙げるならば奴隷の解放は、ラマダーン月[1]の昼間に妻と交わってしまった時や、ズィハール[2]、不慮の殺人における第1の贖罪となっていますし、また誓いの不履行などの贖罪にも定められています。

    ● 奴隷の解放が定められたことに潜む英知:

    奴隷の解放は強く推奨された善行の1つです。至高のアッラーは奴隷の解放を、殺人を始めとした諸々の悪事の贖罪と定められました。

    また奴隷の解放という行いによって、本来基本的権利を有する人間が隷属状態の害悪から解き放たれ、そして自分自身や自分の財産を思いのままに管理運営することが出来るようになるのです。奴隷はイスラームが到来する前の昔から既に存在していましたが、それを除去するための多くの扉を開いたのがイスラームです。

    また奴隷の解放の最高の形は、最も高価で、かつ最もその主人が重宝している者を解放することです。

    ● 奴隷の解放はいかに成立するか?:

    奴隷の解放は「あなたは自由です」とか「あなたは解放されました」などといった、そのことを表すいかなる表現によっても成立します。そして冗談半分で言ったり、その気もないのにそのような表現を口にしても、解放は成立すると見なされます。

    また自分が婚姻を禁じられるような関係にある近親‐父親や母親など‐の奴隷は、彼らを所有した時点でその解放が成立します。

    また主人の子供を産んだ奴隷女性は、その主人の死後自由民となります。

    ● 奴隷を解放することの徳:

    アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「ムスリム(の奴隷)を1人解放する者は誰でも、アッラーがその体の全部分をその(解放された者の)体の全部分をもって地獄の業火から救って下さるであろう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[3]

    ● ムカータバ:とは、奴隷が自らを主人から負債の形で買い取ることです。

    ● ムカータバの法的位置づけ:

    1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてあなた方の右手が所有する者(奴隷のこと)の内でムカータバを望む者には、あなた方が彼らによきもの(敬虔さや生活手段など)を見出す限りそれを許すがよい。そしてアッラーがあなた方に授けられた財産の内から、彼らに施すのだ。,(クルアーン24:33)

     2-主人はその負債を割り引きしたり減額したりして、ムカーティブを援助しなければなりません。

     またムカーティブを売却することも可能で、その場合は彼を購入した者がムカーティブの代わりに金額を支払います。その場合ムカーティブが彼に対しての自らの債務を果たせば奴隷状態から解放されますが、もしそれが出来なければ奴隷状態に戻ります。

     アッラーよ、私たち全員を地獄の業火の首かせから解き放ち、現世の屈辱と来世の懲罰からお救い下さい。

    [1] 訳者注:ヒジュラ暦9月の、いわゆる断食月のこと。

    [2] 訳者注:妻に対し、「あなたは私の母同様だ」などという表現を用いて離婚すること(母親は男性にとって婚姻が禁じられている関係にある女性の筆頭であるため)。詳しくは「6-婚姻とそれに関連した諸事」の章の⑥ズィハールの項を参照のこと。

    [3] サヒーフ・アル=ブハーリー(2517)、サヒーフ・ムスリム(1509)。文章はアル=ブハーリーのもの。