婚姻において禁じられた物事
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婚姻②
婚姻において禁じられた物事
] 日本語 [
النكاح2 : المحرمات في النكاح
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
婚姻において禁じられる物事
● 婚姻の際には、互いに相手が自分にとってイスラーム法上婚姻可能であるという条件を満たしていなければなりません。これについて男性側の観点から見て行きましょう。
● 男性にとってイスラーム法上婚姻不可能な女性は、2つの区分に分けられます:[1]
1-恒久的に婚姻不可能な女性:3つの区分に分けられます:
① 血縁的理由から婚姻不可能な女性:
1.母及びその尊属。2.娘及びその卑属。3.姉妹。4.父方の叔母・伯母。5.母方の叔母・伯母。6.姪(兄弟の娘)。7.姪(姉妹の娘)。
② 乳親族[2]の関係ゆえに婚姻不可能な女性:
乳親族の関係にある女性は、上記の血縁上禁じられる女性と同様の立場にあると
見なされます。それゆえ血縁上禁じられる女性との婚姻が禁じられるように、乳親族の関係にある女性との婚姻も禁じられます。
尚イスラーム法上の正式な乳母となるには、2歳未満の子に5回以上乳を与えなくてはなりません。
③ 血縁以外の縁戚関係ゆえに婚姻不可能な女性:
1.妻の母。2.妻の連れ子である継娘(その母親と性的交渉をもったことが条件となります)。3.父の妻。4.息子の妻。
尚これらとは別に、ムラーアナ[3]も婚姻不可能です。
こうして血縁的理由から婚姻不可能な女性は7種、乳親族ゆえに婚姻不可能な女
性も同様に7種、血縁以外の縁戚関係ゆえに婚姻不可能な女性は4種あることが分かります。
至高のアッラーは仰られました:-(以下の女性を娶ることが)あなた方(男性)に禁じられた:あなた方の母たち、あなた方の娘たち、あなた方の姉妹たち、あなた方の父方の叔母・伯母たち、あなた方の母方の叔母・伯母たち。またあなた方の兄弟の娘たち、あなた方の姉妹の娘たち、あなた方の乳母たち、乳親族たち。また性交渉をもった妻の連れ子である継娘たち。但しもしまだ(その母親と)床入りしていなければ、問題はない。そして実の息子の妻たちと、また姉妹を合わせて娶ること。但し過ぎ去ったことはこの限りではない。実にアッラーは、お赦し深く慈悲深いお方であられる。,(クルアーン4:23)
恒久的に婚姻不可能となる要因は上記のように、①血縁と、②乳親族関係、③血縁関係以外の縁戚関係、の3種類あります。
尚男性が婚姻することの出来る親戚の女性は、以下に挙げる通りです:
1.父方の叔父・伯父の娘。2.父方の叔母・伯母の娘。3.母方の叔父・伯父の娘。4.母方の叔母・伯母の娘。
2.一時的に婚姻不可能な女性:
1. 血縁上か乳親族関係上かを問わず、姉妹2人、あるいは父方であれ母方であれ妻とその叔母・伯母を合わせて娶ること。但しそのどちらかの内既に結婚している方が離婚されたり他界したりしたような場合、禁じられていたもう一方は婚姻可能な状態になります(但し離婚の場合は、彼女のイッダ(待婚期間)の経過後であることが条件となります)。
2. イッダ(待婚期間)中にある女性。その期間が終了すれば婚姻可能になります。
3. 自分が3回離婚宣告‐つまり完全離婚‐した女性。元夫以外の男性と結婚して性的交渉を持ち、そしてその後にその者と離婚すれば、元夫と再婚することが合法化されます。
4. ウムラ(小巡礼)、あるいはハッジ(大巡礼)のためにイフラーム[4]の状態にある女性。イフラームを解けば、婚姻可能になります。
5. 非ムスリム男性にとってのムスリム女性。男性側がイスラームに改宗すれば、婚姻可能です。
6. ユダヤ教徒・キリスト教徒以外の非ムスリム女性にとってのムスリム男性。女性側がイスラームに改宗すれば、婚姻可能です。
7. 他人の妻、及び自分以外の者によって離婚されイッダ(待婚期間)中にある女性。但し後者が奴隷女性である場合、その限りではありません[5]。
8. 姦淫を犯した女性が、姦淫を犯した男性あるいはそれ以外の男性と結婚することは、彼女が悔悟し、かつイッダ(待婚期間)を終了するまで許されません。
これらの女性は、婚姻を妨げているそれらの要素が消失しない限り、婚姻することは非合法です。
尚男性は、自らの姦淫の結果生まれた娘と婚姻することは出来ませんし、同様に母親が自分の姦淫の結果生まれた息子と婚姻することも出来ません。
また奴隷男性はその女主人と、奴隷女性はその男主人と婚姻することが出来ません。というのも彼らは主人の右手が所有する立場(奴隷身分)にあるからです。
また婚姻契約においても性交渉が禁じられる者‐例えば母親や姉妹など‐は、例えその者が自分の奴隷であったとしても、それを禁じられます。
尚イスラーム法において性交渉が合法化されるのは婚姻契約か、奴隷かのいずれかをもってでしかありません。[6]
● 「子供の母」に関して:
「子供の母」とは、主人の子供を産んだ奴隷女性のことです。主人は普通の奴隷女性のように彼女と性交渉を持ったり、彼女を貸与したり使役したりすることは出来ますが、売却したり贈与したりワクフ[7]としたりすることは出来ません。
尚奴隷女性の離婚後のイッダ(待婚期間)は、月経1回のみです。
● 婚姻契約を害さないような条件:
女性、あるいはその後見人が夫側に、「彼女以外の妻を娶らない」とか「彼女を家や国から出さない」とか、あるいはマハル(贈与財)の割り増しなど婚姻契約自体を損ねない範囲での条件をつけるのは有効です。そして前もって合意した有効な条件において結婚後に夫が反した場合、望むならば彼女は婚姻契約の破棄を申し出ることが出来ます。
● 夫が行方不明になった場合:
夫が行方不明になった女性が別の男性と結婚した場合、もし2番目の夫と床入りする前に最初の夫が現れた時には、彼女は最初の夫の妻と見なされます。
一方2番目の夫と床入りした後に最初の夫が現れた場合、最初の夫は2番目の夫が離婚手続きをすることなく、最初に自分が行った婚姻契約でもって彼女を自分の妻とすることが出来ます。ただ彼女と性交渉を持つのは、彼女がイッダ(待婚期間)を終了してからです。尚望むならば、最初の夫は自分が妻に与えたマハル(贈与財)を2番目の夫から受領することを条件に、彼女を彼‐つまり2番目の夫の妻とすることも出来ます。
● 夫婦のどちらかがサラー(礼拝)をしない場合:
1-夫がサラーをしない場合、妻は彼と夫婦であり続けることは出来ず、性交渉を持つことが禁じられます。というのもサラーの放棄は不信仰[8]であり、不信仰者がムスリム女性と婚姻関係にあることは許されないからです。
一方妻がサラーを放棄した場合も同様で、彼女が至高のアッラーに悔悟しない限り、その夫は彼女と離婚しなければなりません。
2-婚姻契約の際に夫婦のいずれもがサラーをしていないような状態であったら、婚姻契約自体は有効です。
一方婚姻契約の際には夫婦のいずれか一方のみしかサラーをしていなかったが、結婚後には両者ともにサラーをするようになったというような場合、婚姻契約を新たに行い直さなければなりません。というのもそのような場合、婚姻契約の際に一方が不信仰者であったと見なされるからです。
● 離婚後、妻がイッダ(待婚期間)中にあり、かつ彼女を離婚したのが3回未満であるような状況下においてその姉妹と結んだ婚姻契約は無効です。一方彼女の離婚が3回目の、よりの戻しが利かない完全離婚であった場合に同様のことをすれば婚姻契約自体は有効となりますが、その行い自体は禁じられています。
[1] 訳者注:女性にとって婚姻不可能な男性も、男性の女性に対するそれと符合しています。
[2] 訳者注:イスラーム法上の授乳を通して形成された、特別な親族関係のことです。詳しくは「⑨授乳」を参照のこと。
[3] 訳者注:リアーンを行った妻。リアーン(詳しくは「⑦リアーン」の項を参照のこと)とは夫が妻を姦淫の罪で訴え、妻がそれを否定して夫の嘘を主張し、そしてお互いが自分の意見を譲らないまま互いの正当性をある手続きの元で誓い合うことです。これが成立すると離婚となり、そしてお互いに縁を取り戻すことは永遠に不可能になります。
[4] 訳者注:詳しくは「3-イバーダート‐⑥ハッジとウムラ」の③イフラームの項を参照のこと。
[5] 訳者注:これはハンバリー学派の見解で、ハナフィー学派などでは禁じられています(アル=ムグニー:9/479)。
[6] 訳者注:イスラームは奴隷の存在に対して積極的なわけではなく、むしろ奴隷になった者たちの解放を折に触れて奨励しています。詳しくは「4-ムアーマラート」の章の26「奴隷の解放」の項を参照のこと。
[7] 訳者注:詳しくは「4-ムアーマラート」の「23-ワクフ」参照のこと。
[8] 訳者注:サラーの義務性を否定するがゆえにそれを放棄するのであれば、学者の見解はその者が不信仰者であるということで一致しています。一方サラーの義務性を認めつつも怠惰や適当さゆえにそれを行わないことについては、それが大きな罪であるということで学者間の意見が一致しています。そしてハナフィー学派以外の4大法学派では、そのような者でも改悛せずにサラーを放棄し続した場合、イスラーム法治国家においては死刑になるとしています。いずれにせよこのような問題が起きたら、住んでいる国や社会的・個人的状況により詳しいと思われるイスラーム学者に問い合わせるのが賢明でしょう。「3-イバーダート‐②サラー(礼拝)」の「①サラーの意味と徳‐サラーの義務性を否定する者、及びサラーをしない者に関する諸見解」の項も参照のこと。