強盗に対する固定刑
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固定刑
6強盗に対する固定刑
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حد قطاع الطريق
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
5-強盗に対する固定刑
● 強盗とは:都市部であるか僻地であるかを問わず、武器を携えて人を襲撃し、暴力を用いて人々の財産を強奪する者たちのことです。窃盗のようにこっそりとではなく堂々と犯行を行います。強盗には、アッラーとその使徒に反逆する者たちという別称もあります。
● 強盗の形:
自分たちの力かあるいは他人の威かを問わず、武器を持って行路を脅かす者たちの他にも、以下のような様々な種類の強盗団があります:殺人団、邸宅や銀行などを狙う強盗団、女性を乱暴目的で拉致する誘拐集団、また子供の誘拐集団など。これらは皆強盗の範疇に入ります。
● 強盗の法的位置づけ:
強盗とは都市部や僻地などの場所を問わず、建物や輸送手段などを狙って武器を装備して襲撃する者たちのことであり、人々の殺害や陵辱や財産の略奪などをその目的とします。
また路上や家、車や電車、船や飛行機などで発生するこの類のあらゆる事件は、それが武器や爆発物による脅迫や、建物の破壊や放火、人質などいかなる形であったとしても、強盗と同様の位置づけをされることになります。
そして強盗は凶悪犯罪の1つであり、それゆえにその懲罰も非常に厳しいものとなっているのです。
● 強盗に対する刑罰:
強盗に対する刑罰には4つの場合が考えられます:
1-強盗殺人:つまり殺人及び財産の強奪。その懲罰は死刑及び磔(はりつけ)の刑です。
2-強盗行為において殺人を犯したものの、財産を奪うまでには至らなかった場合:その懲罰は死刑ですが、磔はされません。
3-強盗行為において財産を強奪したものの、殺人は犯さなかった場合:死刑には科されませんが、右手と左足の切断刑を科されます。
4-殺人も財産の強奪も犯さなかったものの、人々の安全を脅かしたような場合:国外追放刑が科されますが、統治者[1]は犯罪者自身及びその他の者たちへの犯罪防止につながり、かつ悪と腐敗を根こそぎにするような効果のある処罰を考えることも可能です。
1-至高のアッラーはこう仰られました:-(不信仰から)アッラーとその使徒(の仲間)に争いをしかけ地上に腐敗をもたらす輩は、死刑、あるいは磔の刑、あるいは手足の交互切断刑、あるいは追放刑に処される。これらは現世における彼らへの懲罰であるが、来世においてはこの上ない懲罰が彼らを待ち受けているのだ。但しあなた方が召し捕る前に悔悟した者たちは別である。アッラーがお赦し深く慈悲深いお方であることを知るのだ。,(クルアーン5:33-34)
2-アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のもとにウクル族の者が数名やって来て、イスラームに改宗しました。そして彼らがマディーナで腹部の病気に罹った折、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はサダカ(喜捨)のためのラクダを連れて来させ、彼らにその尿[2]と乳を飲ませるよう命じました。彼らはその通りにし、健康を取り戻しましたが、その後棄教してラクダの番人たちを殺害し、ラクダを奪って逃走しました。それでアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は彼らの足跡を辿る追跡の手を回し、その者たちを連行させて来ました。そして彼らの手と足を切断し、目に焼印を押し、それから(切断後の治療用の)焼きごても施さずに放置し、死ぬに任せました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[3])
● 強盗に対して固定刑が科されるための条件:
強盗に対して固定刑が科されるためには、以下の条件が満たされる必要があります:
1-性別を問わず、強盗犯が責任能力を有する(つまり成人で正常な理性を備えていること)ムスリムかズィンミー[4]であること。
2-奪った財産が尊重に値するもの:ゆえに、楽器や酒類の窃盗では切断刑は執行されません。
3-財産の多少を問わず、それを保管場所から奪っていること。
4-強盗は自供か、あるいは宗教を遵守し常識を備えた男性2人がその者の犯行を証言することで確証されます。
5-「5-窃盗に対する固定刑」で言及されたように、その犯行において疑念の余地がないこと。
● 強盗犯の悔悟:
逮捕される前に悔悟した強盗犯は、追放刑や切断刑、磔の刑や死刑などの本来科されるべき刑罰を免れます。その場合には奪った生命や損ねた身体器官に対する報復刑、奪った財産の返還などの人間に対する権利を‐被害者側から赦免されない限り‐果たすことになります。
しかし悔悟する前に逮捕されてしまった場合は、強盗に対する固定刑が科されます。それは、偉大かつ荘厳なるアッラーの固定刑が形骸化されてしまうことを防ぐためでもあるのです。
● 正当防衛:
それが人間であるか動物であるかを問わず、自らの生命や家族、財産を脅かされた場合には、それを防ぐに適当であると思われる程度の反撃をします。もし相手を殺害しなければそれを防げないのであれば、そうすることが許され、かつその者の生命の補償を問われることもありません。そしてもし襲われた者が死んでしまった場合、その者は殉教者と見なされます。
● ズィンディークとは:内心は不信仰者でありながら、外面上はイスラーム教徒であると取り繕う者のことです。
● ズィンディークの法的位置づけ:
ズィンディークは、アッラーとその使徒に対して戦いを挑む者と見なされます。そしてズィンディークと議論をもって戦うことは、イスラームにおいて武器をもって強盗と戦うことよりも偉大なことなのです。というのも強盗が及ぼす被害の範囲は財産や肉体ですが、ズィンディークによる被害は心とイーマーン[5]にまで及ぶからです。
このような者は召し捕られる前に悔悟すればそれは受け入れられ、命も保障されます。しかし召し捕られてしまったら最後、その悔悟は受け入れられることはありません。そして悔悟を勧められる機会も与えられないまま、固定刑によって死刑となるのです。