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ここでは、イスラーム法治社会やイスラーム法治国家内に居住する非ムスリムの夫婦関係について見ていきましょう。

    婚姻⑤

    非ムスリム間の婚姻

    ] 日本語 [

    النكاح5: نكاح الكفار

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    非ムスリム間の婚姻[1]

    ● 啓典の民‐ユダヤ教徒とキリスト教徒‐の婚姻規定は、マハル(贈与財)や扶養の義務、離婚、婚姻不可能な女性の件などにおいて、ムスリム間の婚姻規定と同様です。

    ● 非ムスリム同士の婚姻[2]は2つの条件を満たすことで、イスラームにおいて承認されます:

    1-彼らの宗教や法においてその婚姻の正当性を信じていること。

     2-婚姻に関し、ムスリム側にその法的手続きを依頼してこないこと。というのももし彼らがムスリム側に何らかの法的手続きや訴えをして来た場合、ムスリムは彼らをイスラーム法に則って扱う義務があるからです。

    ● 非ムスリム同士の婚姻の形:

    婚姻契約を結ぶ前の非ムスリムがムスリムのもとに彼らの婚姻の認証のためにやって来た場合、イスラーム法に則って‐つまり提示と受諾、女性側の後見人、宗教を遵守し良識あるムスリム男性の証人2人など‐婚姻契約を執り行います。

    一方既に彼らのやり方で婚姻している非ムスリムがムスリムのもとに彼らの婚姻の認証のためにやって来た場合、もし女性側に婚姻不可能な要素‐例えば親子関係や兄弟関係など‐が見られなければ、その婚姻を認めます。しかしもしそうでない場合は、その婚姻を取り消して2人を別れさせます。

    ● 非ムスリム女性への婚姻契約の際のマハル(贈与財):

     非ムスリム女性への婚姻契約の際のマハル(贈与財)は、マハルという名のもとに既に女性によって受領されたのであれば、それがイスラーム法で合法な物であっても、あるいは酒類や豚肉のように非合法な物であっても、変わらず彼女の所有物となります。

    一方もし女性がそれをまだ受領していない場合、もしそれがイスラーム法で合法な物であれば、彼女はそれを受領することが出来ます。しかしもしそれが非合法な物であった場合、あるいはマハルがそもそも贈られていなかった場合には、彼女に合法かつ適切な額のマハルを贈るようにします。

    ● もし非ムスリムの夫婦が同時にイスラームに改宗した場合、あるいは啓典の民‐ユダヤ教徒とキリスト教徒‐であった夫婦の内の夫のみがイスラームに改宗した場合、2人の婚姻関係はそのまま継続します。

    ● もし初夜前に啓典の民ではない妻の夫がイスラームに改宗した場合、婚姻契約は無効となります。

    ● もし初夜前に非ムスリム夫婦の女性だけがイスラームに改宗した場合、婚姻契約は無効となります。というのもムスリム女性が非ムスリム男性と婚姻するのは、非合法であるからです。

    ● 非ムスリム夫婦の内の一方だけがイスラームに改宗した場合:

    床入り後に非ムスリム夫婦の内の一方だけがイスラームに改宗した場合、婚姻契約は中断されます。

    もし夫がイスラームに改宗した場合、啓典の民ではない非ムスリムの妻は離婚のためのイッダ(待婚期間)に入ります。そしてイッダが終了する前に彼女もイスラームに改宗すれば、彼の妻に戻ることが出来ます。

    一方もし妻がイスラームに改宗し、彼女のイッダが終了するまでに非ムスリムの夫がイスラームに改宗しなかった場合、彼女は別のムスリム男性と結婚することも出来ますし、あるいは元夫のことを待ち続けることも可能です。そしてもし元夫がイスラームに改宗したら、彼女は新たな婚姻契約やマハル(贈与財)などの手続きなしに彼の妻となることが出来ます。彼女は元夫がイスラームに改宗するまでは、彼との性的関係を持ってはなりません。

    ● ムスリム夫婦の内の一方が棄教した場合:

    ムスリム夫婦のいずれか、あるいは両方とも棄教した場合、もしそれが初夜前であったら婚姻契約は無効となります。そしてもし初夜後であったら、女性は離婚のためのイッダ(待婚期間)に入ります。もしこの期間中に棄教者が悔悟して再びイスラームに改宗した場合、2人はまた婚姻関係のよりを戻します。そしてもし棄教したままイッダが終了してしまったら、婚姻関係は破棄されます。

    ● 夫がイスラームに改宗した際にあり得るいくつかの状況:

    1-啓典の民‐ユダヤ教徒とキリスト教徒‐の妻を持つ夫がイスラームに改宗した場合、婚姻関係は持続します。もし妻が啓典の民以外の非ムスリムであったら、彼女がイスラームに改宗しない限り、婚姻関係の破棄となります。

     2-5人以上の妻を持つ非ムスリムの夫がイスラームに改宗した場合、もし彼女らがイスラームに改宗するか、あるいはそもそも啓典の民であったのなら、その中から4人だけ選んで残りの者は離婚しなければなりません。

     3-もし互いに姉妹である複数の妻、または互いに伯母(あるいは叔母)と姪の関係にある複数の妻を持つ非ムスリム男性がイスラームに改宗した場合、彼はその内の1人だけを選ばなくてはなりません。

     こうしてイスラームに改宗した者には、婚姻であれ何であれイスラームの法規定が適用されることになるのです。

     至高のアッラーはこう仰られました:-そしてイスラーム以外のものを宗教として望む者は、決してそれを受け入れられない。そして彼は来世においては損失者の類いなのである。,(クルアーン3:85)

    [1] 訳者注:この主題では、イスラーム法治社会やイスラーム法治国家内に居住する非ムスリムに焦点が当てられています。

    [2] 訳者注:イスラーム法に照らしてみれば、イスラーム法以外のものに基づいて行われる婚姻は本来非合法です。但し上記の2つの条件を満たすことで、非ムスリム同士の婚姻関係はイスラーム法においても正当かつ有効なものとして承認されるのです。