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宣誓とはある特定のことに関し、アッラーの御名かかれの美名、あるいはかれの属性の言及により、誓いを立てた物事を強調することです。

    10宣誓

    ] 日本語 [

    الأيمان

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    10-宣誓

    ● 宣誓とは:ある特定のことに関し、アッラーの御名かかれの美名、あるいはかれの属性の言及により、誓いを立てた物事を強調することです。

    ● 成立する宣誓:

    正しい形で成立し、かつ誓った内容のことを遂行出来ない際には贖罪が科されるような宣誓とは、アッラーの御名、またはその美名、あるいはその属性において誓ったものです。具体例としては以下のような表現があります:

    والله(ワッラーヒ)」

    بالله(ビッラーヒ)」

    تالله(タッラーヒ)」(以上、“アッラーにかけて”とか“アッラーに誓って”とかいう意味)

    والرحمن(ワッラフマーニ)」(“最も慈悲ぶかきお方に誓って”といった意味)

    وعظمة الله(ワ・アザマティッラーヒ)」(“アッラーの偉大さに誓って”といった意味)

    وجلاله وعزته(ワ・ジャラーリヒ・ワ・イッザティヒ)」(“その荘厳さと威光にかけて”といった意味)

    ورحمته(ワ・ラフマティヒ)」(“そのご慈悲に誓って”といった意味)

    ● アッラー以外の何かに宣誓することの法的位置づけ:

    1-アッラー以外の何かに宣誓することは禁じられており、小シルク[1]と見なされます。というのも宣誓はそれにおいて誓うものの偉大視を意味しますが、真に偉大視すべきものはアッラーしかいないからです。

    イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「アッラー以外のものに誓う者は、シルクを犯す者である。」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[2]

    2-具体例として、以下のような宣誓は禁じられた宣誓の形式です:

    والنبي(ワンナビイ)」(“預言者に誓って”といった意味)

    وحياتك(ワ・ハヤーティカ)」(“あなたの人生に誓って”といった意味)

    والأمانة(ワ・アル=アマーナ)」(“信託に誓って”といった意味)

    والكعبة(ワ・アル=カアバ)」(“カアバ神殿に誓って”といった意味)

    والآباء(ワ・アル=アーバーゥ)」(“父祖たちに誓って”といった意味)

     預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「実に偉大かつ荘厳なアッラーは、あなた方があなた方の父祖たちにおいて誓うのを禁じられた。ゆえに何かにおいて誓いたい者は、アッラーにおいて誓うか、そもなければ黙っているのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[3]

    ● 宣誓は偉大な行いです。ゆえに宣誓した内容は遵守しなければならず、決して軽視してはなりません。また宣誓は軽々しく行うものではなく、その規定から逃れるために策略を練ったりしてもなりません。宣誓はイスラ-ム法上、重要な物事においてのみ行うことが許されているのです。

    ● 宣誓の種類:

    宣誓には3種類あります:

     1-成立する宣誓:前述した通り、有効な宣誓です。もし誓った内容を遂行出来なければ、贖罪が科されます。

     2-偽りの宣誓:これは既に起こっていることに関し、そうと知りつつ嘘の誓いをすることで、禁じられています。このような行いは人の権利を侵害するか、あるいは放埓や詐欺を目的として用いられるもので、大罪[4]の内の1つに数えられます。アラビア語では「アル=ヤミーン・アル=ガムース」つまり“沈下の宣誓”といった意味の言葉で表現されますが、それはつまりこの種類の宣誓はそれを行う者を罪の中に、次いで地獄の業火の奥に沈め切ってしまうという意味合いが含まれています。尚偽りの宣誓には贖罪は科されず[5]、成立もしません。ただ早急に、このような罪から改悛する必要があります。

     3-空虚な宣誓:これは以下の例に示すように、宣誓自体を意図せずについ口を滑らせてしまった類の宣誓のことです:

     「لا والله(ラー、ワッラーヒ)」(“いや、アッラーに誓って”といった意味で、特に宣誓を意図せずに言ってしまうこと)

     「بلى والله(バラー、ワッラーヒ)」(“そうだ、アッラーに誓って”といった意味で、特に宣誓を意図せずに言ってしまうこと)

     「والله لتأكلن(ワッラーヒ、ラ・タアクルンナ)」(“アッラーに誓って、あなたは食べるのだ”といった意味で、誰かに何か食べ物を勧めるために思わず言ってしまった類のもの)

     また過去に発生したことについて、自分がそう信じているところのものに関して誓ったものの、その後にそうではないことが判明した場合なども、この宣誓の範疇に入って来ます。

     この種の宣誓も有効ではなく、贖罪も科されません。またそれを行ったしまった者が、その行いを咎められることもありません。

     至高のアッラーは仰られました:-アッラーはあなた方が宣誓において、うっかり口を滑らせてしまったことに関してお咎めになることはない。しかしかれは、あなた方が(きちんと)成立させた宣誓(の不履行)に関して、あなた方をお咎めになるのである。,(クルアーン5:89)

    ● 「アッラーに誓って。私はイン・シャーアッラー(アッラーが思し召しならば)、そうはしない」という風に、宣誓においてアッラーのご意志による別の可能性もあることを示唆するならば、例え誓った内容の通りにしなくても宣誓の破棄とはなりません。

    ● アッラー以外の何かに宣誓することの罪滅ぼし:

     1-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“宣誓の際にその中で:「アッ=ラートとアル=ウッザー[6]にかけて」と言った者は、「ラー・イラーハ・イッラッラー(アッラーの他に真に崇拝すべきものはなし)」と唱えるようにせよ(、それがそのことにおける贖罪であるから)。また友人に「賭け事をしよう」などと言ってしまった者は、サダカ(施し)をせよ(、それがそのことにおける贖罪であるから)。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[7]

     2-サアド・ブン・アビー・ワッカース(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、彼が「アッ=ラートとアル=ウッザー[8]にかけて」と言ってしまった時、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は彼に言いました:「“ラー・イラーハ・イッラッラーフ・ワフダフ(アッラーお1人の他に真に崇拝すべきものはなし)”と、3回唱えよ。そしてあなたの左側に3回唾を吹き、アッラーにシャイターンからのご加護を乞うのだ。そして2度とそのようなことを言うのではない。」(アフマドとイブン・マージャの伝承[9]

    ● 宣誓に関する法規定:

     宣誓には5つの規定があります:

     1-義務の宣誓:生命を保証されている人間を破滅から救うための宣誓のことです。

     2-推奨される宣誓:人々の間を調停するために用いる宣誓などのことです。

     3-合法な宣誓:何らかの合法な行為やその放棄、あるいは何らかの物事を強調する際の宣誓のことです。

     4-忌避すべき宣誓:忌避すべき物事の遂行や、推奨される物事の放棄における宣誓。また売買行為の際の宣誓も、忌避されます。

     5-禁じられた宣誓:故意に嘘の宣誓をすることや、禁じられた物事の遂行や義務行為の放棄における宣誓のことです。

    ● 宣誓した内容の不履行に関して:

     宣誓した内容の不履行の方が望ましいようなことであれば、むしろその不履行の方がスンナ[10]となります。例えば忌避すべき物事の遂行や、推奨される物事の放棄などに関して誓った場合がそうです。このような場合はよりよい選択‐つまり宣誓の不履行‐をし、その贖罪を行います。これは預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の次の言葉によっています:「何かについて宣誓し、そして(宣誓した内容とは)別のことの方がよいと判断した場合は、そうせよ。そしてその宣誓の(不履行の)贖罪をするのだ。」(ムスリムの伝承[11]

    ● 親戚との関係断絶などの義務行為の放棄や、飲酒など禁じられた物事の遂行に関する宣誓に関しては、それを取り消し、贖罪することが義務となります。

    ● また合法な物事の遂行や放棄に関する宣誓に関しては、それを取り消すこともまた合法です。この場合も贖罪が科されます。

    ● 宣誓の不履行に関する贖罪が科される条件:

     宣誓の不履行に関する贖罪が科される条件は以下の通りです:

     1-例えば「何某の家には入らない」といったことのように、宣誓の内容が未来において実現可能でかつ正しく成立したものであり、また責任能力のある者[12]によって誓われていること。

     2-自らの選択で誓っていること。強制されて誓った場合、そもそも宣誓は成立しません。

     3-宣誓を意図して行っていること。会話の中で「لا والله(ラー、ワッラーヒ)」(“いや、アッラーに誓って”といった意味)とか「بلى والله(バラー、ワッラーヒ)」(“そうだ、アッラーに誓って”といった意味)などという使い回しを宣誓と意図せずに口にしてしまうことでは、宣誓は成立しません。

     4-宣誓した内容の不履行:つまり放棄すると誓ったものを自らの選択で自覚しつつ行ったり、あるいはすると誓ったものを同様の形で放棄したりすることです。

    ● 宣誓の不履行に関する贖罪の形:

     宣誓の不履行に関する贖罪は、以下の物事から選択して行うようになります:

     1-小麦粉や米やナツメヤシの実など、その土地の食料と見なされるものを10人の貧者に各々半サーア[13]ずつ施すこと。あるいは既に調理されている食事を10人の貧者に施すのでも構いません。

     2-10人の貧者に、それでもってサラー(礼拝)を行うことが可能な衣服を分配すること。

     3-ムスリム奴隷の解放。

     以上の3つから選択して贖罪を行いますが、もしいずれも不可能であれば3日間のサウム(斎戒、いわゆる断食)をします。サウムはあくまで上記の3つが遂行不可能な場合にのみ、代替策として行うことが出来ます。

    ● 宣誓の不履行に先立って贖罪を行うこと:

     贖罪は宣誓の不履行に先立って行うことも、あるいは遅延させることも可能です。前者の場合は宣誓の取り消し、そして後者の場合は宣誓の不履行あるいは破棄の償いとなります。

     至高のアッラーは、宣誓の不履行に関する贖罪を明示してこう仰られました:-アッラーはあなた方が宣誓において、うっかり口を滑らせてしまったことに関してお咎めになることはない。しかしかれは、あなた方が(きちんと)成立させた宣誓(の不履行)に関して、あなた方をお咎めになるのである。そしてその贖罪は、あなた方の家族に食べさせるような平均的なものでもって、10人の貧者に食物を施すこと。または彼らに対する衣服の提供、あるいは奴隷1人の解放である。そして(それらが)見つからない場合は、3日間のサウム(斎戒、いわゆる断食)をせよ。これらがあなた方が誓った際の、あなた方の(履行しなかった)宣誓に対する贖罪である。そして宣誓を(軽々しく用いることを)控えよ。このようにアッラーはあなた方が感謝すべく、あなた方にそのみしるしをご説明されるのだ。,(クルアーン5:89)

    ● 何かをしないことを誓ったにも関わらず、忘却または強制、あるいはそうすれば誓った内容が破棄されるということに関する無知ゆえにそれを行ってしまった者は、贖罪を科されません。そして宣誓自体は破棄されずに継続されます。

    ● 全ての行いはその意図によって決定付けられます。ゆえに何かを誓った後にそれとは相反した行いをとったとしても、考慮するのは表面的な言葉ではなく、その意図なのです。[14]

    ● 宣誓の真実:

     宣誓は、それを要求する者の意図を考慮します。ゆえに裁判官が何らかの告発などに対して誰かに宣誓を要求する場合、その宣誓は誓う者自身ではなく彼に宣誓を求めた者の意図を考慮することになります。もし誰に要求されることもなしに宣誓した場合は、宣誓した者自身の意図が考慮されます。

    ● 合法なものを非合法とするような誓願に関して:

     食べ物やその他の物事など、妻以外のもの[15]で自らに合法な物事を非合法とするような誓願を立ててしまった場合、それを破ったら贖罪が科されます。

     至高のアッラーは仰られました:-預言者(ムハンマド)よ、なぜあなたの妻たちを喜ばそうとしてアッラーがあなたに合法とされたものを禁じるのか?アッラーはお赦し深く、慈悲深いお方であられる。実にアッラーは、あなた方にあなた方の宣誓の解消の仕方(つまり贖罪)を明らかにされた。アッラーこそはあなた方の援助者であり、かれは全てをご存知になりこの上ない英知を備えられたお方。,(クルアーン66:1-2)

    ● 罪深い物事に関する誓願:

     例えば「私は善行をしない」などというような誓願を立てた場合、それを継続することは許されません。この場合にはその誓願に対する贖罪を行い、善行を行うようにします。

     至高のアッラーはこう仰られました:-そしてあなた方はアッラーをあなた方の誓願において、あなた方が善行を施し、自分自身を(アッラーのお怒りや懲罰の原因となるような言動から)守り、人々の間を良い形で取り持つことを妨げるようなものとしてはならない。アッラーは全てをお聞きになられ、全てをご存知になられるお方。,(クルアーン2:224)

    [1] 訳者注:詳しくは「1-タウヒードとイーマーン」の章の「シルクとシルクの種類」の項を参照のこと。

    [2] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(3251)、スナン・アッ=ティルミズィー(1535)。文章はアブー・ダーウードのもの。

    [3] サヒーフ・アル=ブハーリー(2679)、サヒーフ・ムスリム(1646)。文章はムスリムのもの。

    [4] 訳者注:「大罪(カビーラ)」とは、それに対し現世において刑罰が適用されたり、あるいはそれを犯すことで来世において地獄を警告されていたり、またアッラーのご慈悲からの放逐やかれのお怒りを招くこととされているものです。例としてはシルクや殺人、ズィナー(姦淫)や魔法、リバー(不法商取引)、親不孝、嘘の誓いなどがあります。

    [5] 訳者注:4大法学派の内、シャーフィイー派のみが偽りの宣誓に贖罪が科されるという見解を取っています。一方残りの3法学派は、贖罪は科されないとしています。

    [6] 訳者注:「アッ=ラート」も「アル=ウッザー」もマッカの多神教徒が崇拝していた、アッラー以外の神の名称です。

    [7] サヒーフ・アル=ブハーリー(4860)、サヒーフ・ムスリム(1647)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [8] 訳者注:「アッ=ラート」も「アル=ウッザー」もマッカの多神教徒が崇拝していた、アッラー以外の神の名称です。

    [9] 真正な伝承。ムスナド・アフマド(1622)、スナン・イブン・マージャ(2097)。文章はアフマドのもの。アル=アルナウートは、この伝承の経路が真正であると判断しています。

    [10] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。

    [11] サヒーフ・ムスリム(1650)。

    [12] 訳者注:つまり正常な理性を備えた成人であること。

    [13] 訳者注:サーアはマディーナの計量単位の1つで、果実や種子・穀物類などに用いられます。半サーア(約1.2kg)は2ムッドに相当します。

    [14] 訳者注:例えば1日間だけのつもりで「食べ物を口にしない」と誓願した場合、例えそれを口外してはいなくとも、その期間の限定は有効となります。但しこれはハンバリー学派とマーリク学派の見解です。

    [15] 訳者注:妻との性交渉の放棄に関する誓願を指しています。詳しくは「婚姻」の章の「⑤性交放棄の誓い」の項を参照のこと。