マハル(贈与財)
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婚姻⑥
マハル(贈与財)
] 日本語 [
النكاح6: الصداق
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
マハル(贈与財)
● マハルの理解:
イスラームは女性の地位を引き上げ、彼女らにそれ以前には有していなかった所有権を与えました。そして婚姻の際には彼女らにマハルを贈ることを義務付け、それを彼女らの男性に対する特権とし、それでもって彼女らの気持ちを和らげ、満足させ、その地位に対しての尊重の念を表現するものとし、また彼女らから快楽を得ることの代償と、男性の保護下に入ることの充足感を原因付ける物としました。
至高のアッラーは仰られました:-そして女性たちにマハル(婚姻の際の贈与財)を、定められたものとして贈るのだ。そしてもし彼女らが自ら進んでそれを譲るというのなら、それを有難くよい形で頂くのだ。,(クルアーン4:4)
● マハルの法的位置づけ:
マハルは女性の権利であり、男性はその肉体を自分にとって合法なものとする際に、それを必ず払わなければなりません。そしていかなる者も彼女の合意なしには、彼女が受け取ったマハルに手を付けることは許されません。
● マハルの額:
1-女性のマハルを軽減し、容易くするのはスンナ[1]です。最善のマハルは最も負担の少ないものなのです。また多額のマハルは夫が妻に対する嫌気を催させる1原因にもなり得ますし、もしそれが常識を超えた浪費や誇示の域に達したら非合法なものとなります。また多額のマハルは、夫を借金や無心に苦しめる原因ともなり得るでしょう。
アブー・サラマ(彼にアッラーのご満悦あれ)は、アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)に尋ねました:「“アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のマハルはいくらだったのですか?”(彼女は)言いました:“彼の妻たちに対するマハルは、12オキーヤと1ナッシュでした。ナッシュとは何か知っていますか?”私は言いました:“いいえ。”すると(彼女は)言いました:“半オキーヤのことです。つまり全額で500ディルハムでしたが、これがアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のその妻たちへのマハルだったのです。”」(ムスリムの伝承[2])
2-預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の妻たちのマハルは500ディルハムでしたが、これは現代では約4200円に相当します[3]。
また彼の娘たちのマハルは400ディルハムでしたが、これは現代では約3300円程度です。
時代の変遷や物価の変化を考慮に入れるのは勿論のことですが、私たちもこのことにおいてアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)をよき模範とするべきでしょう。
● マハルの種類:
何らかの価値がある物なら、その価値の高低を問わず、マハルとすることが出来ます。
それでもし経済的な余裕のない者であれば、マハルをクルアーン読誦の教授や奉仕活動のような何らかの利益に代えることが出来ますし、また結婚することを条件に奴隷女性を解放し、それを彼女へのマハルの代わりとすることも出来ます。
● マハルを支払う時期:
マハルは全額先払いにすることが推奨されていますが、全額あるいは一部だけ後払いにすることも可能です。
もし婚姻契約の際にマハルの取り決めが済んでいなくても契約自体は有効ですが、女性側に適切な額のマハルを払うことは義務付けられます。もし女性が合意すれば、平均的に見て少なめと思われる額でも問題はありません。
● 自分の娘を嫁がせる際、マハルを適切と思われる額より多く設定しても少なく設定しても、契約の有効性自体は損ねません。尚女性は契約によってマハルを所有し、夫と2人きりになることと床入りによって、その全額を保証されます。
● マハルを取り決める前に夫が他界した場合:
婚姻契約後、マハルが取り決められぬまま床入り前に夫が他界した場合、妻には他の女性と同様の適当なマハルが与えられなくてはなりません。また彼女は夫からの遺産相続権も有し、夫の他界後はイッダ(待婚期間)に入らなければなりません。
● 5番目の妻、イッダ(待婚期間)中の女性などのようにそもそも有効ではない婚姻によって床入りしてしまったり、あるいは誤って妻とは違う別人女性と床入りしてしまったような場合、女性側に適切なマハルを支払わなければなりません。
● 夫婦間でマハルの額や対象に関して諍いが起こった場合、夫側が誓いの言葉を唱えれば彼の言い分が通ります。一方もしマハルの受領が済んだか済んでいないかで夫婦間に諍いが生じた場合は、両者に証拠がない限り、妻の言い分が通ります。