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狩猟とは相応の道具を用いて、誰の所有物でもなく、また誰にも捕まえられていない合法な野生動物を意図しつつ仕留めることです。

    狩猟

    ] 日本語 [

    الصيد

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    狩猟

    ● 狩猟とは:そうすることを意図しつつ、かつそれ相応の道具を用いて、誰の所有物でもなく、また誰にも捕まえられていない合法な野生動物を仕留めることです。

    ● 狩猟の法的位置づけ:

    狩猟は聖域以外の場所であれば、本来合法です。またムフリム[1]には、陸上の狩猟が禁じられます。

    -(イフラームにある者も、そうでない者も)あなた方には海(や湖、河川など)での狩猟と、それを食べることが許されたのだ。(それは定住者である)あなた方と、旅行中の者への恩恵である。そしてあなた方がイフラームの状態にある間は、陸上での狩猟は禁じられた。あなた方が(最後の日に)召集されるところのお方である、アッラーに対して慎むのだ。,(クルアーン5:96)

    ● 獲物の状態:

     獲物の捕獲後は、2つの状態が考えられます:

     1-生命に別状がない場合:このような動物は、イスラーム法に則った屠殺法[2]によって屠らなければなりません。

     2-死んでいるか、あるいは瀕死の状態である場合:この状態にある生き物は、以下に示す獲物の条件を満たしていれば合法となります。

    ● 合法な獲物の条件:

    1-狩猟者が、法的に有効な屠殺の適性を備えている者であること。つまりムスリムか啓典の民(ユダヤ教徒とキリスト教徒)で、成人か、あるいは未成年ではあっても分別を備えている者であること。

    2-手段:これには2種類あります:

    ①  歯や爪以外の、流血を及ぼすような鋭い物。

    ②  猟犬や鷹のように狩猟用に訓練されたものによる殺傷。それらが殺した獲物は合法です。

    3-猟犬や狩猟用の鷹などを用いる場合、それを獲物に向けて離す時に狩猟を意図すること。

    4-(弓矢や銃などの)道具を用いる時、あるいは猟犬や狩猟用の鷹などを獲物に向けて離す時に、アッラーの御名を唱えること。もしそれをうっかり忘れてしまった場合問題はありませんが、故意に唱えなかったとしたならば獲物は合法とはなりません。

    5-獲物がイスラーム法的に狩猟の許されているものであること。ゆえに聖域での狩猟や、ムフリムの狩猟は禁じられます。

    ● 犬の飼育に関して:

     犬を飼育することは禁じられます。というのもそれは不浄な生き物であり、また人に恐怖感を与え、天使の往来を妨げる[3]からです。そして犬を飼育する者からは、毎日2カラットの報奨が引かれる[4]のです。

     但し猟犬や牧童犬、農園の番犬など必要や福利に適う場合であれば、問題はありません。

    ● 猟犬が獲物を捕獲したり、あるいはその口にくわえたりした場合、その獲物を7度洗う[5]必要はありません。というのもそもそも猟犬というものは、物事の簡易化のためのものだからです。

    ● 槍のような物を獲物に向かって投げつけた場合、その刃先が獲物を貫いて死に至らしめたら、その肉の食用は合法です。しかし刃先ではなく柄の部分が当たったことによって獲物が死んでしまった場合は、食用を許されません。[6]

    ● 遊び半分で狩猟すること:

    獲物を捕獲しては離すというような遊び半分の、自分自身にも他人にとっても無益な狩猟は非合法です。それは財産の浪費と、生命の無用の殺生につながります。

    ● 狩猟の獲物、あるいは屠殺する動物が息絶える前にその体から流出する血液は、不浄です。それを何らかの目的に利用してはいけません。

    ● 盗難したり強奪したりした道具をもって狩猟した獲物は合法ではありますが、狩猟した本人は罪を犯したことになります。

    ● サラー(礼拝)を完全放棄している者の狩猟した獲物や、屠殺した動物の食用は禁じられます。というのもサラーを完全放棄すればムスリムとは見なされないからです[7]

    ● 子供が鳥と戯れること:

    子供が戯れるための動物や鳥類を生け捕りにすることは合法です。但し子供がそれを虐待したり、面倒を怠ったり、あるいは食事をさせなかったりすることがないように、十分な注意を払う必要があります。

    ● 本気であるか冗談であるかに関わらず、戦闘状態でもない人間に対し武器を向けることは禁じられています。

    [1] 訳者注:「ムフリム」とは、ハッジ、あるいはウムラの諸行の開始を意図した者のことです。

    [2] 訳者注:詳しくは本章の「屠殺」の項を参照のこと。

    [3] 訳者注:アブー・タルハ(彼にアッラーのお悦びあれ)は、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がこう言ったと伝えています:「天使は、犬と肖像のある家には入らない」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承)。

    [4] 訳者注:イブン・ウマル(彼らにアッラーのお悦びあれ)は、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がこう言ったと伝えています:「猟犬でも牧童犬でもない犬を飼育する者からは、毎日2カラットの報奨が差し引かれる」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承)。尚「カラット」は計量単位においては12分の1ディルハム(約0.248g)相当ですが、ここで意味されている量や程度については不明です。別の伝承では1カラットの報奨は「ウフド山」にも相当とする、といった記述も見て取れます。

    [5] アブー・フライラ(彼にアッラーのお悦びあれ)は、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がこう言ったと伝えています:「犬が口をつけたあなた方の容器を清浄にするには、それを7回洗うのだ。そしてその最初の回は砂で洗うようにせよ」(ムスリムの伝承)。

    [6] 訳者注:流血を及ぼすような刃物、あるいはそれに類似する物(銃弾などはここに含まれます)を用いなければ、法的に正当な屠殺や狩猟とは見なされません。

    [7] 訳者注:サラーの義務性を否定するがゆえにそれを放棄するのであれば、学者の見解はその者が不信仰者であるということで一致しています。一方サラーの義務性を認めつつも怠惰や適当さゆえにそれを行わないことについては、それが大きな罪であるということで学者間の意見が一致しています。そしてハナフィー学派以外の4大法学派では、そのような者でも改悛せずにサラーを放棄し続した場合、イスラーム法治国家においては死刑になるとしています。いずれにせよこのような問題が起きたら、住んでいる国や社会的・個人的状況により詳しいと思われるイスラーム学者に問い合わせるのが賢明でしょう。「3-イバーダート‐②サラー(礼拝)」の「①サラーの意味と徳‐サラーの義務性を否定する者、及びサラーをしない者に関する諸見解」の項も参照のこと。