致命的ではない傷害
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報復刑
3致命的ではない傷害
] 日本語 [
القصاص – الجناية على ما دون النفس
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
3-致命的ではない傷害
● 致命的ではない傷害とは:人体に及ぶあらゆる損傷の内、命自体には影響することのないもののことです。
● 創傷や切断による身体器官への侵害:
もし故意によって行われたのであれば報復刑が科せられますが、故意に準じるものや過失の場合には血債が科されます。
● 生命において報復刑を科されるような対象であれば、身体器官の損傷や創傷に関しても同様に報復刑を科されます。そして生命において報復刑を科されないような対象に関しては、既述のように身体器官の損傷や創傷に関しても報復刑を科されません。身体器官の損傷と創傷に関する報復刑が科されるのは、生命に対する報復刑のそれと同様、故意に行われた場合のみです。ゆえに故意に準じるものや過失の場合には報復刑が科されることがなく、血債が科されます。
● 致命的ではない傷害が故意であった場合、報復の刑には2つのケースが考えられます:
1-器官の損傷:目や鼻、耳、歯、瞼、唇、腕、足、指、手首、性器、睾丸などは、それと同一の物でもって報復されます。
至高のアッラーはこう仰られました:-そしてわれら(アッラーのこと)は、その(トーラーのこと)中で彼らに対し定めた:命には命で、目には目で、鼻には鼻で、耳には耳で、歯には歯で、そして傷害は(同様の傷害によって)報復される。しかしそれを免じてやる者は、それが彼にとっての贖罪となろう。アッラーが下されたもので裁かない者は、実に不正者なのである。,(クルアーン5:45)
● 器官の損傷に対する報復刑の条件:
① 被害者が安全を保障されている身分であること。
② 加害者と宗教が同一であること。
③ 加害者が責任能力を問われる状態であること。
④ 被害者が加害者の子息ではないこと。
⑤ 犯行が故意のものであったこと。
これらの条件、及び下記の条件を満たしている場合、加害者に報復刑が科されることになります。
● 器官の損傷に対する報復刑が執行されるための条件:
① 不正から免れていること:例えば切断が、器官の節目やある明確な範囲内において成され、被害者の被ったもの以上のもの、あるいはそれ以下のものでもって報復されることのないようなもの。
② 器官の名と場所の一致:つまり目には目でもって報復されますが、右目でもって左目を、あるいは親指でもって子指を報復することは出来ません。
③ 状態と機能性における一致:健常な手足や健常な目を、麻痺している手足や視力のない目でもって報復することは出来ません。しかしその逆は可能で、血債への移行はありません。
● 上記の条件に当てはまれば、報復刑の執行が可能になります。しかしこの内の1つでも当てはまらない場合、報復刑の執行は不可能になり、血債の支払いへと移行することになります。
2-創傷:故意に他人を傷つければ、報復刑の対象となります。
● 創傷における報復刑の条件は、生命における報復刑の条件と同じです。また報復刑の執行が不正を免れており、被害者に与えた被害の程度よりも多くの報いを被るようなことがないことも条件となります。例えば頭部や脚部などにおける骨にまで至る刺傷などのような場合、患部の範囲が明確であるため、報復刑の執行は可能となります。
● もし報復刑の執行が不正を免れなかったり、あるいは被害者に与えた被害の程度よりも多くの被害を与えてしまう恐れのある場合、報復刑の執行は不可能になり、血債の支払いへと移行することになります。
● 身体器官の損傷や創傷の報復刑に関してもまた、血債の支払いをもって減免してやることが推奨されます。それよりもよいのは血債さえも赦免してやることですが、人を許して自らを正す者にはアッラーからの報奨があることでしょう。但し加害者側が十分な財産を所有している場合、被害者がそれを請求するのは勧められています。
アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は報復の刑が起訴されれば、(被害者に加害者の)赦免を命じない時はありませんでした。」(アブー・ダーウードとイブン・マージャの伝承[1])
● 傷害による被害の拡大に関して:
1-傷害による被害の拡大は、報復の刑及び血債によって保障されます。
それで例えば指の切断の被害を受けた後、患部が腐敗して手そのものを失うことがあった場合、手自体が報復刑の対象となります。またもし傷害による被害が進展して被害者が命を失う結果となった場合、命が報復刑の対象となります。
2-鞭打ち刑などの固定刑がきっかけで死んでしまったり、身体器官の損傷や創傷に対する報復刑のかどで命を落としたりしたような際には、その命の賠償金はイスラーム国家の国庫から拠出されます。
3-身体器官の損傷や創傷に対する報復刑は、被害者の患部が完治する前に執行してはなりません。というのも、患部が広がったり被害が進展したりする可能性があるからです。また同様の理由から、被害者が完治する前に血債を支払うことも控えます。
4-故意に指を1本切られ、それについて加害者を赦免したものの、後にその傷が手やあるいは命にまで影響したような場合、もし無条件の赦免だったのであれば加害者には報復刑も血債も科されません。しかしもし血債の減免措置の形で赦免していたのであれば、その場合は血債全額分を支払わなければなりません。
● 権利における公正:
他人を手で、または棒で、あるいは鞭で叩いたり、頬を打ったりした者は、被害者が受けたのと同様な形で報復されます。それで加害者は被害者の赦免がない限り、1回ある場所を殴ったら同じ場所を1回だけ、もし何らかの道具を用いていたらそれそのものかあるいは同様の物を用いて報復します。
● 他人のプライバシーを覗き見することに関して:
無断で他人の家を覗き見し、その際に(何か物を投げつけられたりして)その目を失明したりしても、加害者には血債も報復刑も科されません。
アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アブー・アル=カースィム(預言者ムハンマドのこと:彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「誰かが無断であなたを覗き、あなたがその者に向かって石粒を投げつけ、それがその眼をえぐってしまったりしても、あなたには何の咎めもない。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[2])
● 輸血に関して:
1-輸血は、その他に合法的な代替物がないような場合など、その必要性に迫られた場合合法です。またその条件として、熟練した医者がそれを執り行い、それによって多くの利益を得ることが見込まれ、かつ血を提供する者がそれに同意し、そうすることによって害を被らないことなどが挙げられます。このような条件下であれば、病人を危険な状態から守ることが出来る程度の輸血を行うことに問題はありません。
2-事故や出産など、出血多量が見込まれる不慮の事態や必要性に備え、血液銀行に血液を集めておくことは合法です。