前金払いによる取引
This subject translated into
カテゴリー
Full Description
前金払いによる取引
] 日本語 [
السلم
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
3-前金払いによる取引
● 前金払いによる取引とは:契約の場で商品の代金を手渡し、具体的に性質を定めた商品の譲渡を遅延する契約のことです。
アッラーはムスリムへの便宜と、その必要性に対する対処の一環として、前金払いによる取引を合法化されました。この取引においては代償の支払いが早めさせられ、かつ商品の譲渡は遅延されます。
● 前金払いによる取引の法的位置づけ:
前金払いによる取引は合法です。
例としては1年後に何某の種類のナツメヤシの実50サーア[1]を受領することを条件に、6000円を即払いすることなどが挙げられます。
イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「何かを前払い取引するのであれば、(商品を)決まった容量で、あるいは決まった重量で、あるいは決まった期日に(おいて明確に特定せよ)。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[2])
● 前金払いによる取引が有効となるための条件:
前金払いによる取引が有効となるには、売買取引が有効となる諸条件[3]に加え、更に以下のような条件が要求されます:①商品が知られていること、②その価格が知られていること、③契約の場で価格が支払われること、④商品が後に譲渡され、かつ契約の時点ではそれが譲渡される時点での形ではまだ存在していないこと、⑤商品に関して不明瞭な点がなくなるまでに、詳しくその性質や形を説明しておくこと、⑥商品が生産された後にそれを譲渡する期日と場所の設定。
● 売買取引に関連した諸事について:
1-価格の設定:ある商品に対し、特定の価格を決めることです。その目的は売る側がその商品の取引において不正を被らず、かつ買う側がその商品の価格の調査や交渉において面倒を負わないためです。
*価格の設定の法的位置づけ:
① もしある商品の価格の設定が人々への不正や、彼らが望まないことの不当な強制、あるいはアッラーが彼らに合法化した物の禁止などにつながる場合、それは禁じられます。
② その価格の設定なしには人々の福利が達成されない時、それは合法化されます。例えば人々が必要としている商品の所有主が、その価格の上昇がなければその売却を妨げられるような場合などです。そのような時は誰もそれによって大きな被害を被らない程度に、その商品に適した価格を設定します。
2-独占:独占とは、人々が必要としているある商品を人々の手が届かなくなる程度にまで買い占め、それをもってその商品の価格上昇を目的とすることです。
*独占の法的位置づけ:
独占はそこに含まれる貪欲さと強欲さ、人々への抑圧などの理由から非合法であり、それを行う者は過ちを犯す者です。
マァマル・ブン・アブドッラーによれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「独占する者は、皆過ちを犯す者である。」(ムスリムの伝承[4])
3-現金獲得を目的とした取引:商品を後払いで購入し、その後自分がそれを買った当人ではない者に、自分がそれを買った値段より安い値段で売却することです。
*現金獲得を目的とした取引の法的位置づけ:
現金が必要であるにも関わらずそれを貸し付けてくれる者が見つからないような場合、現金獲得を目的として何らかの商品を後払いで購入し、それを自分が購入した者とは別の者に自分が購入したよりも安い価格で売却することは可能です[5]。
4-手付金による取引:購入者がいくらかの財を売人に払って商品を手にし、それを商品の値段の一部と見なすことです。そしてもし購入者が商品の購入を断念する場合、支払った手付金は売人のものとなります。
支払い猶予期間を定めることを条件に、この種の取引は合法です。
[1] 訳者注:サーアはマディーナの計量単位の1つで、果実や種子・穀物類などに用いられます。1サーア(約2.4kg)は4ムッドに相当します。
[2] サヒーフ・アル=ブハーリー(2340)、サヒーフ・ムスリム(1604)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[3] 訳者注:詳しくは「ムアーマラート」の章の「①売買取引」の項を参照のこと。
[4] サヒーフ・ムスリム(1605)。
[5] 訳者注:4大法学派の大方の学者は、この取引を合法とする見解を示しています。しかし上記のようにあくまで現金を必要としているにも関わらず、誰も現金を貸してくれる人が見つからないことや、商品を必ず一旦手元に所有すること、また自分が購入した者ではない者にそれを売却すること、リバーによる利益獲得の手段としないことなどの諸条件を遵守しなければなりません。尚イブン・タイミーヤやイブン・カイイムらのように、この種の取引を非合法視する学者も存在します。