カリフ(地上の後継者)と統治
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アッラーの道における努力
6カリフ(地上の後継者)と統治
] 日本語 [
الجهاد في سبيل الله
6- الخلافة والإمارة
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
6-カリフ(地上の後継者)と統治
● カリフの擁立に関して:カリフの擁立はムスリムにとっての義務です。カリフの擁立をもってイスラーム共同体の保護とムスリムの諸事の運営、固定刑の実施と諸権利の履行、イスラーム法の施行と勧善懲悪、そしてイスラームの布教が可能となるのです。
至高のアッラーはこう仰られました: -ダーウード(ダヴィデ)よ、われら(アッラーのこと)はあなたを地上の後継者(ハリーファ:カリフ)とした。ゆえに真理でもって人々の間を裁き、私欲に従ってアッラーの道から外れるのではない。アッラーの道から外れる者たちには、彼らが清算の日を忘れていたことに対する厳しい懲罰があるのだ。,(クルアーン38:26)
● イスラーム統治者の統治権の確定の仕方:
イスラーム統治者の統治権は、以下のいずれかの方法で確定します:
1-ムスリムの合意:学者や義人、高貴な者や名士などからなる権威を有する人々の忠誠の誓いによって、イスラーム統治者が擁立されます。
2-前統治者の明言による指名。
3-限られた数の敬虔な者たちからなる協議による選任。
4-力により人々を制圧し、服従させ、自らの統治権を主張すること。この場合でも臣民はアッラーの命に反しない限りにおいて、彼に従わなければなりません。
● 地上におけるアッラーの後継はイーマーン[1]と正しい行いによる:
至高のアッラーは仰られました:-アッラーは、あなた方以前の者たちが地上(の統治権)を引き継いだように、あなた方の内の信仰する者と正しい行いをする者が地上で彼ら(不信仰者の統治)を引き継ぐことをお約束された。そして彼ら(後継者たち)に対してアッラーがお悦びになる彼らの宗教を興隆させ、その恐怖の後に安寧でもって取って代えられることを。彼らはわれ(アッラーのこと)を拝し、われにいかなるものも並べはしない。しかしこの後に至っても不信仰に陥る者こそは、放埓者である。,(クルアーン24:55)
● カリフはクライシュ族からであり、人々は彼らに追従する:
1-ムアーウィヤ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「実にこの権威はクライシュ族のもとにある。彼らが宗教を遵守している限り、彼らに逆らう者は皆アッラーによって地獄の業火に顔から放り込まれよう。」(アル=ブハーリーの伝承[2])
2-イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「この権威は、まだクライシュ族に属している。彼らの内の2人でもまだ残っている限り。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[3])
3-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“人々はこの権威において、クライシュ族に追従する。彼らの内のムスリムは彼らの内のムスリムに、そして彼らの内の非ムスリムは彼らの内の非ムスリムに追従するのだ。"」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[4])
● 統治権を要求したり切望したりすることの禁止:
1-アブドッラフマーン・ブン・サムラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は私に、こう言いました:“アブドッラフマーン・ブン・サムラよ、人を治める権威を求めるのではない。もし自ら要求してそれを獲得したのならば、あなたはそこにおいて助力を得られないであろう。しかしもし自ら要求することなくその任務を与えられたのなら、そこにおいて助力を授かろう。"」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[5])
2-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「あなた方は統治権を挙って求めるであろう。そしてそれは審判の日の後悔となるであろう。授乳する女性の幸福さよ、そして離乳する者の不幸さよ[6]。」(アル=ブハーリーの伝承[7])
3-アブー・ムーサー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は、私の民からの2人の者と共に預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のもとに赴きました。2人の内の一方は、言いました:“アッラーの使徒よ、私たちに統治権をお授け下さい。"そしてもう1人も、同じことを言いました。すると(預言者は)言いました:“私たちはそれを要求する者にも、それを切望する者にも、これを与えないのだ。"」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[8])
● その義務を遂行する度量のない者は特に、統治の権威を遠慮すること:
アブー・ザッル(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は言いました:“アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)よ、私を(統治者に)用いてくれませんか?"すると(預言者は)私の肩を叩いて、こう言いました:“アブー・ザッルよ、あなたは弱い。そしてそれは1つの信託なのだ。それを得るにふさわしく、かつその義務を果たすことの出来る者でない限り、審判の日には屈辱と後悔(の理由)となるのだ。"」(ムスリムの伝承[9])
● 公正な統治者の徳と不正な統治者の報い:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-公平であれ。実にアッラーは公平な者たちを愛でられるのだから。,(クルアーン49:9)
2-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「その御影の他には日陰となる場所がないその日(つまり審判の日)、至高のアッラーがその御影でもってかくまって下さる7人の者(は以下の者たちである):公正な指導者。アッラーへの崇拝の中で育った若者…。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[10])
3-アブドッラー・ブン・アムル(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“公正な者たちはアッラーの御許で、光の壇上にある。それは偉大かつ荘厳なる慈悲深きお方(アッラーのこと)の右手にあり、そしてかれの両手はいずれも右手なのである。(そして公正な者たちとは)彼らの裁決と家族、そして委任された物事に対して公正である者のことなのだ。"」(ムスリムの伝承[11])
4-マァキル・ブン・ヤサール(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「アッラーがその面倒を任せられた者を騙したまま他界した者は誰でも、アッラーによって天国に入ることを禁じられるであろう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[12])
● カリフと統治者は男性のもの:
アブー・バクラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「ペルシャ人がホスローの娘に王権を授与させた知らせが預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)のもとに届いた時、彼は“女性に統治を託す民は栄えない"と言いましたが、アッラーはラクダの(役の)日々[13]に、その言葉でもって私を益して下さいました。」(アル=ブハーリーの伝承[14])
● カリフの職務:
1-至高のアッラーは仰られました:-そしてアッラーの下されたもの(イスラーム法)でもって彼らの間を裁き、彼らの私欲に従うのではない。そして彼らが、アッラーがあなたに啓示したものの一部においてあなたを試練にかけることに対し、注意を払うのだ。それで彼らが背き去っても、知るがよい。アッラーは彼らのいくつかの罪ゆえに、彼らを罰することを欲されているのだ。実に多くの人々は、放埓者である。,(クルアーン5:49)
2-至高のアッラーは仰られました:-ダーウード(ダヴィデ)よ、われら(アッラーのこと)はあなたを地上の後継者(ハリーファ:カリフ)とした。ゆえに真理でもって人々の間を裁き、私欲に従ってアッラーの道から外れるのではない。アッラーの道から外れる者たちには、彼らが清算の日を忘れていたことに対する厳しい懲罰があるのだ。,(クルアーン38:26)
● 統治者に対する忠誠の誓いの形:
1-ウバーダ・ブン・アル=サーミト(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私たちはアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)に対して、忠誠の誓いをしました。(その内容とは:)逆境においても順境においても、また気乗りすることにおいても気が進まないことにおいても、またそれが私たちの利己心に反するようなものであったとしても、彼の命を良く聴き入れ、服従すること。その資格を有する者から、統治権を奪ったりしないこと。どこにあろうと真理を語ること。アッラー(の道)において非難されることを恐れたりしないこと。‐そしてもう1つの伝承では“その資格を有する者から、統治権を奪ったりしないこと"の後に、“あなた方が(その者に)明白な不信仰を見出し、かつそこにおいてアッラーからの明証が存在する場合はその限りではない"とあります。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[15])
2-ジャリール・ブン・アブドッラー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私たちは預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)に対し、その命を良く聴き入れ、服従することにおいて忠誠の誓いをしました。そして彼は私に、私が出来ることや、全てのムスリムに対して助言することを教授して下さいました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[16])
● 統治者の不正や独占に対して辛抱することの義務:
1-ウサイド・ブン・フダイル(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アンサール[17]の内のある者がアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)と2人きりになった時、こう言いました:「“あなたは何某を徴用されましたが、私のことも使って下さいませんか?"(預言者は)言いました:“あなた方は私の(死)後、利己心に襲われるであろう。ゆえに私と(来世において)水辺[18]で見えるその時まで、辛抱するのだ。"」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[19])
2-イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「指導者の内に何か厭うべき物事を見出しても、辛抱するのだ。というのも(統治の)権威から1シブル[20]でも抜け出た者は、ジャーヒリーヤ(イスラーム以前の無明時代)の死を迎えることになるのだから。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[21])
● 例え権利を奪われても、統治者に服従すること:
サラマ・ブン・ヤズィード・アル=ジャァフィー(彼にアッラーのご満悦あれ)はアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)に訊ねて、こう言いました:「“アッラーの預言者よ、自分たちの権利は求めるくせに私たち(臣民)の権利を阻むような統治者が擁立されたら、一体私たちはどうすればよいでしょうか?"すると(預言者は)彼から背きました。そして更に(同じことを)訊ねると、また彼から背きました。そして2回目か3回目に訊ねた時、アル=アシュアス・ブン・カイスが彼を引っ張って引き止めました。そして(預言者は)言いました:“(そのような者でも、統治者の命令を)よく聞き入れ、従うのだ。彼らには彼らが行ったことの責任があり、あなた方にはあなた方が行ったことに対しての責任があるのだから。"」(ムスリムの伝承[22])
● 試練の時、あるいはいかなる状況においても正しいムスリムの集団とその指導者と共にあることの義務:
1-フザイファ・ブン・アル=ヤマーン(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「人々は良い時勢についてアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)に訊ねていたものでしたが、私はそれが到来することを恐れるばかりに、悪い時勢について彼に訊ねたものでした。
それで私は言いました:“アッラーの使徒よ、私たちは(以前)ジャーヒリーヤ(イスラーム以前の無明時代)と悪の中にありましたが、アッラーは私たちに良き時勢をもたらして下さいました。しかしこの良き時勢の後、悪い時勢はやって来るのでしょうか?"
(預言者は)言いました:“ああ。"
それで私は言いました:“それではその悪い時勢の後にまた良き時勢は到来しますか?"
(預言者は)言いました:“ああ。しかしそこには穢れがある。"
私は言いました:“その穢れとは何でしょうか?"
(預言者は)言いました:“私のスンナ[23]ではないものを踏襲し、私の正しい導きではないものによって導かれる民のことである。あなたは彼らの内の者を知り、そして否認するであろう。"
私は言いました:“それではその良き時勢の後に、悪い時勢は到来するのでしょうか?"
(預言者は)言いました:“ああ。火獄の扉の上から招く者である。その招きに呼応した者は、その中に放り込まれるであろう。"
私は言いました:“アッラーの使徒よ、彼らの特徴を教えて下さい。"
(預言者は)言いました:“ああ。(彼らは)私たちと同じ系譜であり、私たちと同じ言葉を話す民である。"
私は言いました:“アッラーの使徒よ、そのような状況に出くわすことになったら、どうしたらよいのでしょうか?"
(預言者は)言いました:“正しいムスリムの集団とその指導者と共にあれ。"
私は言いました:“(ムスリムの)正しい集団も指導者もなかったとしたら?"
(預言者は)言いました:“それらの(誤った)分派全てから身を遠ざけよ。例えそうすることによって、木の根をかじったまま命果てることになろうとも。"」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[24])
2-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「(統治者への)服従に背き、(正しいムスリムの)集団を離脱した状態で死んだ者は、ジャーヒリーヤ(イスラーム以前の無明時代)の死において死んだのである。
また部族や派閥主義ゆえの怒りや、また人々をそれらへと呼んだり、あるいはそれらへの援助のためなど(イスラームにおいてその正当性もない)盲目な目的において戦い、そして殺された者もまたジャーヒリーヤの死において死んだのである。
そして私の共同体から離脱し、その内の善良な者でも放埓な者でも構わず攻撃し、更にはその内の信仰者にも配慮せず、かつ契約を結んでいる者に対してもその契約を遵守しないような者は私の仲間でもなければ、私が彼の仲間であるわけでもない。」(ムスリムの伝承[25])
3-イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「指導者の内に何か厭うべき物事を見出しても、辛抱するのだ。というのも(統治の)権威から1シブル[26]でも抜け出た者は、ジャーヒリーヤ(イスラーム以前の無明時代)の死を迎えることになるのだから。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[27])
● イスラーム法に背いた統治者を否認する義務と、彼らがサラー(礼拝)を遵守している内は彼らと戦闘しないこと:
ウンム・サラマ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“あなた方に統治者が擁立され、そしてあなた方は(彼らのよい部分を)認め、また(悪い部分を)否認するであろう。そして(彼らの悪い部分を)忌避する者は(その罪と懲罰から)免れ、またそれを否認する者は無事であるが、それに満足し追従する者こそは(その罪を問われることから無事ではないのである)。"(人々は)言いました:“アッラーの使徒よ、彼らと戦ってはいけないのですか?"(預言者は)言いました:“いや。彼らがサラー(礼拝)している内は(そうしないのだ)。"」(ムスリムの伝承[28])
● 団結しているムスリムを分裂させることに関して:
アルファジャ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「あなた方の諸事が全て1人の者に任されているというのに、あなた方を分裂させるか、あるいはあなた方の集団を分散させようとする者が現れたら、その者を殺すのだ。」(ムスリムの伝承[29])
● 2人のカリフに対して忠誠の誓いが行われた場合:
アブー・サイード・アル=フドゥリー(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「2人のカリフに対して忠誠の誓いが行われたら、その内の後の1人を殺すのだ。」(ムスリムの伝承[30])
● 最善の統治者と最悪の統治者:
アウフ・ブン・マーリク(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“あなた方の内の最善の統治者とは、あなた方が彼らを愛し、そして彼らもまたあなた方を愛するような者たちであり、また彼らがあなた方のために祈り、あなた方もまた彼らのために祈るような者たちである。そしてあなた方の内の最悪の統治者とは、あなた方が彼らを憎み、そして彼らもまたあなた方を憎むような者たちであり、またあなた方が彼らを呪い、彼らもまたあなた方を呪うような者たちである。"(ある者が)言いました:“アッラーの使徒よ、剣をもって彼らと戦ってはなりませんか?"(預言者は)言いました:“いや、あなた方の中でサラー(礼拝)している内は(そうしないのだ)。そしてもしあなた方の統治者の内に厭うべき物事を見出したのなら、その行いを厭うのだ。(彼らに対する)服従から身を引いてはならない。"」(ムスリムの伝承[31])
● 統治者の腹心と相談役:
アブー・サイード・アル=フドゥリー(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「アッラーはその後継者であるカリフに2人の腹心を与えることなしに、いかなる預言者も遣わされることはなかった。つまり(その2人とは)善行を命じ、それを勧める腹心と、悪を命じ、それを勧める腹心である。そして無謬な者とは、至高のアッラーがお守りになられた者のことなのである。」(アル=ブハーリーの伝承[32])
● カリフの義務:
ムスリムを治めるカリフには、以下の事柄が課されます:
1-イスラームの確立:つまりイスラームの保護とその布教、そこにおける疑念の払拭、イスラーム法とそれによる固定刑の実施、そしてアッラーの道における奮闘のことです。
至高のアッラーは仰られました:-アッラーは、あなた方が信託をその権利主に対して果たすことを、そしてあなた方が人々の間を裁く時には、公正さによって裁くことをご命じになる。実にアッラーこそはその訓戒されることの恵み深いお方。アッラーこそは全てをお聞きになられ、全てをご覧になられるお方。,(クルアーン4:58)
2-各ポストと行政職に適する人々を配置すること:
至高のアッラーは仰られました:-「実にあなたが雇うのに最善なのは、強くて信頼のおける者です。」,(クルアーン28:26)
3-配下の者の監視:
アブー・フマイド・アッ=サーイディー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は、アズド族のイブン・アッ=ルトゥビーヤという男をザカー(義務の喜捨)の徴収官として徴用しました。そして彼は(それらを携えて)やって来ると、“これらは(ザカーとして徴収した)あなた方のもので、これらは(私が彼らから贈与物として受領した)私のものです"と言いました。(預言者は)言いました:“それではそれらが本当に彼に贈られた物であるか知りたいのなら、彼を彼の父の家か母の家に(無為に)留まらせておいてみるがよい(、というのもその仕事に任命されていなかったら、彼はそれらの物を贈られはしなかったのだから)。私の魂がその御手に委ねられているお方にかけて。ザカーに(不当に)着手する者は審判の日、もしそれがラクダであったなら、その首に吼えるラクダを背負って、または(それが雌牛であったのなら)唸る雌牛を背負って、あるいは(それが羊であったのなら)鳴き声を上げる羊を背負ってやって来るのだ。"それから彼は両脇の下の白い(肌の)部分が見えるくらいに両手を上げ、こう3回言いました:“アッラーよ、私は確かに伝えました。アッラーよ、私は確かに伝えました。"」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[33])
4-臣民の身の回りへの配慮と、その諸事の管理運営:
イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)はこう言いました:「あなた方は皆指導者である。そしてあなた方は皆、その指導下にある者たちに対して責任がある。それで統治者はその臣民に対して責任があり…」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[34])
5-臣民に懇意に接し、助言を与え、その恥部を暴いたりしないこと:
マァキル・ブン・ヤサール(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)はこう言いました:「アッラーからその面倒を任された者たち(の配慮)に対して努力も払わず、助言もしなかった者は、彼らと共に天国に入らないであろう。」(ムスリムの伝承[35])
6-臣民にとっての良き模範となること:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-「…そして私たちをムッタクーン(アッラーのお怒りと懲罰を招くような事柄から身を慎む者たち)の模範として下さい。」,(クルアーン25:74)
2-至高のアッラーは仰られました: -そしてわれら(アッラーのこと)は彼らが(彼らの宗教の遵守と、敵からの迫害などにおいて)辛抱し、われらのみしるしを確信した時、彼らの内からわれらの導きでもって彼らを正しく導く指導者たちを出現させた。,(クルアーン32:24)
● カリフの権利:
カリフはその臣民に対し、以下のような権利があります:
1-アッラーの命に反することではない限り、服従すること:
1-至高のアッラーは仰られました:-信仰する者たちよ、アッラーとその使徒と、あなた方の内の諸事を任された権威に従うのだ。そしてもしあなた方がアッラーと最後の日を信仰しているのなら、あなた方が何かで争った時には(その判決を)アッラーと使徒に委ねよ。それこそは最善であり、最良の帰結なのだ。,(クルアーン4:59)
2-イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「ムスリムは好むことであろうと厭うことであろうと、(統治者の言うことを)よく聞き入れ、服従しなければならない。但し彼からアッラーの命に背くことを命じられた場合は、その限りではない。ゆえにアッラーの命に背くことを命じられたら、それを聞き入れ、服従することはない。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[36])
2-助言:
タミーム・アッ=ダーリー(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はこう言いました:「“宗教とは助言である。"私たちは言いました:“誰に対する(助言ですか)?"(預言者は)言いました:“アッラーとその啓典と、その使徒、そしてムスリムの指導者たち及び一般の者たちに対する助言である。"」[37](ムスリムの伝承[38])
3-真理において援助し、支持すること:
至高のアッラーは仰られました:-そして善行と(アッラーの懲罰から身を守る)服従行為において互いに助け合うのだ。そして悪や憎しみにおいて互いに助け合ってはならない。そしてアッラー(のお怒りや懲罰の原因となるような事柄)から身を慎むのだ。実にアッラーは、その懲罰の厳しいお方である。,(クルアーン5:2)
[1] 訳者注:「イーマーンとイーマーンの諸特質」の項参照。
[2] サヒーフ・アル=ブハーリー(7139)。
[3] サヒーフ・アル=ブハーリー(3501)、サヒーフ・ムスリム(1820)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[4] サヒーフ・アル=ブハーリー(3495)、サヒーフ・ムスリム(1818)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[5] サヒーフ・アル=ブハーリー(7147)、サヒーフ・ムスリム(1652)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[6] 訳者注:「授乳する女性の幸福さよ」とは一説に、統治権を手にした時に得る現世的な地位や栄誉、財産などのことで、一方「離乳する者の不幸さよ」とは、統治者としての義務を全うしないままにそれを失った時の哀れな状態のことを指していると言われます(アブド・アル=ムフセン・アッ=ザーミルによるイブン・ハジャルの法規定に関するハディース集「希望への到達」解説より)。
[7] サヒーフ・アル=ブハーリー(7148)。
[8] サヒーフ・アル=ブハーリー(7149)、サヒーフ・ムスリム(1733)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[9] サヒーフ・ムスリム(1825)。
[10] サヒーフ・アル=ブハーリー(1423)、サヒーフ・ムスリム(1031)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[11] サヒーフ・ムスリム(1827)。
[12] サヒーフ・アル=ブハーリー(7150)、サヒーフ・ムスリム(142)。文章はムスリムのもの。
[13] 訳者注:「ラクダの役」とは、ヒジュラ暦36年(西暦656年)にイラクの地で、アーイシャとズバイル・ブン・アウワーム、タルハが率いる軍とウスマーンが暗殺された後に4代目正統カリフに就いたアリーの軍との間に起こった戦役のこと。
[14] サヒーフ・アル=ブハーリー(4497)、サヒーフ・ムスリム(92)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[15] サヒーフ・アル=ブハーリー(7056)、サヒーフ・ムスリム(1709)。文章はムスリムのもの。
[16] サヒーフ・アル=ブハーリー(7204)、サヒーフ・ムスリム(56)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[17] 訳者注:「アンサール」とは、マッカからマディーナへと宗教迫害を逃れて移住した信仰者たちをマディーナで迎え入れ、財や住居などの物質的側面と精神的側面の両方から援助した信仰者たちのことです。
[18] 訳者注:詳しくは「タウヒードとイーマーン」の章の「イーマーンの基幹‐最後の日への信仰⑧預言者たちの水辺」の項を参照のこと。
[19] サヒーフ・アル=ブハーリー(3792)、サヒーフ・ムスリム(1845)。文章はムスリムのもの。
[20] 訳者注:手を広げた親指の先から小指の先までの長さの単位。
[21] サヒーフ・アル=ブハーリー(7053)、サヒーフ・ムスリム(1849)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[22] サヒーフ・ムスリム(1846)。
[23] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。
[24] サヒーフ・アル=ブハーリー(3606)、サヒーフ・ムスリム(1847)。文章はムスリムのもの。
[25] サヒーフ・ムスリム(1848)。
[26] 訳者注:手を広げた親指の先から小指の先までの長さの単位。
[27] サヒーフ・アル=ブハーリー(7054)、サヒーフ・ムスリム(1849)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[28] サヒーフ・ムスリム(1854)。
[29] サヒーフ・ムスリム(1852)。
[30] サヒーフ・ムスリム(1853)。
[31] サヒーフ・ムスリム(1855)。
[32] サヒーフ・アル=ブハーリー(7198)。
[33] サヒーフ・アル=ブハーリー(2597)、サヒーフ・ムスリム(1832)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[34] サヒーフ・アル=ブハーリー(893)、サヒーフ・ムスリム(1829)。文章はムスリムのもの。
[35] サヒーフ・ムスリム(142)。
[36] サヒーフ・アル=ブハーリー(7144)、サヒーフ・ムスリム(1839)。文章はムスリムのもの。
[37] 訳者注:イマーム・アン=ナワウィーのサヒーフ・ムスリム注釈によれば、「アッラーへの助言」とはかれへの信仰、シルクの回避、かれをあらゆる欠陥から無縁な存在として讃美すること、かれへの服従、かれへの愛など諸々のことを指しているといいます。実際のところアッラーはそのしもべからの助言などは必要とはしませんが、ここでの「助言」という言葉はしもべ自身に向けてのそれを表しています。また「その啓典」に対する助言とは、それがアッラーの御言葉であり、かれからの啓示であること、またそれが他のいかなる言葉にも似ておらず、いかなる者もそれに匹敵するものを創作出来ないことなどを信仰し、また正しい朗誦と畏怖の念をもってそれを読誦すること、熟読吟味しかつそれを訓戒とすること、それを学びかつ実践することなどを意味すると述べています。また「その使徒たち」に対する「助言」とは、彼らと彼らが携えて到来したものを信仰すること、彼らへの服従、尊敬、彼らの生き方や人格の模倣、その教えの布教、彼らの教友たちを愛することなどが含まれます。また「ムスリムの指導者たち」に対する「助言」とは、真実において彼らを援助し、服従し、穏和な手段をもって勧告し、忘れている事を想起させ、彼らのために祈願し、見捨てたりしないことなどが挙げられます。一方「一般の者たち」に対する「助言」とは、彼らを現世と来世における福利のために導くこと、害悪から守ること、無知を除去してやること、言葉と行いでもって援助すること、恥部を隠してやること、同情すること、騙したり嫉妬したりしないこと、自ら欲することを彼らにも欲することなどを意味するといいます。
[38] サヒーフ・ムスリム(55)。