飲食
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飲食
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الأطعمة والأشربة
[اللغة اليابانية ]
ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
محمد بن إبراهيم التويجري
翻訳者: サイード佐藤
ترجمة: سعيد ساتو
校閲者: ファーティマ佐藤
مراجعة: فاطمة ساتو
海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض
1429 – 2008
飲食
● 飲食の法的位置づけ:
本来全ての有益なものと良いものは合法であり、全ての有害なものと悪いものは非合法です。そして信頼性のあるイスラーム法的根拠によって禁止されているものや、明確に悪い性質が確証されたものを除いては、全ての物の本質は合法性なのです。
1-ゆえに偉大かつ荘厳なるアッラーは、心身に有益な全ての飲食物や衣服類などを合法化されました。そしてそれは、しもべたちがそれらを崇高なるアッラーへの服従行為における活力や助力とするためなのです。
至高のアッラーは仰られました:-人々よ、地上にある合法なよき物を食べるのだ。そしてシャイターンの歩みに従ってはならない。実に彼は、あなた方の明らかな敵なのであるから。,(クルアーン2:168)
2-そしてアッラーは全ての有害な物、及び益よりも害の方が多いような物を、禁じられました。アッラーは全ての物から良い物のみを私たちにお許しになられ、悪い物を私たちに禁じられたのです。至高のアッラーはその使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)について、こう形容されました:-彼ら(ムスリム)に善行を命じつつ悪行を禁じ、よき物を合法としつつ悪い物を禁じる。,(クルアーン7:157)
● 食物が人間の身体に与える影響:
人間が口にする食物は、その性格や振る舞いに反映されます。
つまり良い食べ物は人に良い影響を及ぼし、同様に悪い食べ物も人に悪い影響を及ぼすのです。これが、アッラーがそのしもべに対しよい物を摂取することをお命じになり、悪い物を禁じられた理由なのです。
● 飲食物の本来の性質:
飲食物の本来の性質は合法性です。
ゆえに肉、穀物、果実、蜂蜜、乳、ナツメヤシの実など、害悪のない清浄な全ての飲食物は合法なのです。
一方(イスラーム法に則って屠殺[1]されなかった)死体や流れた血液などの不浄な物や、毒物や酒類、マリファナなどの麻薬類や煙草など有害な物は禁じられます。というのもそれらは悪い性質を有し、身体や財産や理性に害を及ぼすからです。
● 食事に招待された者がすること:
1-ムスリムがその同胞であるムスリムに食事をご馳走されたら、その詳細‐それが合法な材料から作られたかどうかといったことなど‐については訊ねることなくそれを口にすることがスンナ[2]です。飲料についても同様です。
2-自慢や名声、見栄などのために豪奢な接待やご馳走を競い合うような輩の招待は、応じる必要もなければ食べる必要もありません。
● ナツメヤシの実の徳:
ナツメヤシの実は、最良の食事の1つです。これが備えられている家は飢えることもなく、また毒や魔術にも効能があります。最善のナツメヤシの実はマディーナ産のもので、特にアジュワという種類のものがよいとされます。
サアド・ブン・アビー・ワッカース(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“毎朝7粒のアジュワを食べる者は、その日毒や魔法に冒されることがないであろう。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[3])
● ナツメヤシの実の利益の数々:
ナツメヤシの実は肝臓を強くし、気性を和らげ、血圧を下げると言われます。また身体の栄養補給において最も優れた果実で、糖分を多量に含み、それを唾液と共に摂取すると寄生虫を排除するとも言われます。ナツメヤシの実は果実であると共に食事であり、また薬であると共に菓子でもあるのです。
● 古いナツメヤシの実を食べる時はそれをよく調べ、虫などがいたらそれをつまみ出すようにします。
● 食することが禁じられる動物は、以下の3種類のものを除いて皆不浄です:
① 人間。
② 昆虫類のように、魂のない生き物。但し不浄性をもたらすゴキブリのようなものは別であり、それは生死を問わず不浄であると見なされます。
③ 猫やロバのように、身近にいてその接触を阻止することが困難なもの。但し犬はこの限りではありません。
● 動物や鳥類の中で禁じられるもの:
これにはいくつかの範疇があります:
① 家畜用ロバや豚など、イスラーム法源においてその悪性が明示されている全てのもの。
② 牙を有する全ての猛獣や鉤爪を有する全ての猛禽類のように、イスラーム法源においてその種類が明示されている全てのもの。
③ ネズミやある種の昆虫のように、その悪性が周知のものであるもの。
④ 排泄物のような不浄な物を摂取する動物のように、悪性に影響されているもの。
⑤ 蛇やサソリのように、イスラーム法源において殺すことが命じられているか、あるいはヤツガシラやモズ、蛙や蟻や蜂などのように殺すのを禁じられているもの。
⑥ カラスやハゲワシのように、死体を主食とするもの。
⑦ ラバ‐雄ロバと雌馬がかけ合わされたもの‐の様に、合法なものと非合法なものの中間のもの。
⑧ アッラーの御名が唱えられずに屠殺されたもののように、穢れたものや死肉。
⑨ 盗難品や略奪品のように、イスラーム法がその取得や摂取を許可しないもの。
● 食用を禁じられる動物の種類:
ライオン、虎、狼、豹、犬、狐、山猫、ワニなどの攻撃用の牙を有する肉食獣は食用を禁じられます。但しハイエナ[4]のみは例外で、合法です。
● 食用を禁じられる鳥の種類:
鷲や鷹、トンビやフクロウなどの狩猟用の鉤爪を有するような猛禽類は、食用を禁じられます。
またハゲタカやカラス、ヤツガシラのように死肉やごみを主食とする類のものも、その食用を禁じられます。
● 法的に食用可能な動物及び鳥類:
1-前述した類のものと、それに類似したもの以外の全ての陸上動物は食用可能です。無論のことラクダ、牛、羊といった家畜の肉も合法です。
また野生のロバ、馬、ハイエナ、トカゲ[5]、野牛、ヤギ、レイヨウ、ウサギ、キリンなどといった動物を含む、全ての動物は‐攻撃するための牙を有していないことを条件に‐合法です。
2-また鳥類に関しても鶏、アヒル、ダチョウ、鳩、雀など、前述したもの以外のものであれば全て合法です。
イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は牙を持つ全ての動物と、鉤爪を持つ全ての鳥類(の食用)を禁じました。」(ムスリムの伝承[6])
3-水中でしか生活出来ないような水生生物は、その大きさの大小を問わず全て合法です。これに関しては、例外はありません。至高のアッラーは仰られました:-(イフラームにある者も、そうでない者も)あなた方には海(や湖、河川など)での狩猟と、それを食べることが許されたのだ。(それは定住者である)あなた方と、旅行中の者への恩恵である。,(クルアーン5:96)
● 食することが禁じられるもの:
1-至高のアッラーは仰られました:-(屠られる際に)アッラーの御名が唱えられなかったもの(動物の肉)は、食べるのではない。実にそれは真理からの逸脱である。,(クルアーン6:121)
2-至高のアッラーは仰られました:-あなた方に禁じられたものは、(イスラーム法に則って屠殺されなかった)死体、(流れる)血液、豚肉、アッラー以外の名において屠られたもの、絞殺されたもの、撲殺したもの、転落死したもの、突き殺されたもの、獣に食い殺されたものである。但し(それらがまだ息のある内に)あなた方が止めを刺したものは、その限りではない。また偶像に(捧げるために)屠られたものと、アル=アズラーム[7]で分配することも(禁じられている)。,(クルアーン5:3)
● 生きたまま解体されるような動物は、(イスラーム法に則って屠殺されなかった)死体と見なされます。そのような肉の食用は禁じられます。
● 死体と血液の内合法であるもの:
(イスラーム法に則って屠殺されなかった)死体や流れる血液は、どちらも食用を禁じられます。但し次の伝承で預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が例外とされたものは、その限りではありません。
「2種類の死体と2種類の血液は、私たちにとって合法である:(それらはつまり)魚とイナゴ、そして肝臓と脾臓である。」(アフマドとイブン・マージャの伝承[8])
● 食用油脂に関して:
油脂や油、ゼラチンなどが含まれる食べ物や菓子類などは、それらが不浄な物質との混合物ではない植物由来のものである限り、合法です。そしてもしそれらが豚や(イスラーム法に則って屠殺されなかった)死体などに由来するものであれば、禁じられます。
それらは合法な動物に由来するもので、かつその動物がイスラーム法に則った方法で屠殺され、かついかなる不浄な物質とも混合していない場合である限りにおいて合法となるのです。
● 汚い物を食する動物を食べることに関して:
不浄なものを主食とする動物や鳥類は、それに乗ることも、食用とすることも、またその乳を飲むことも、その卵を食することも禁じられます。
但しそれを拘束して清浄な食事を与え、それ自身も清浄になってきたと思えるようになった時、初めて合法となります。
● 非合法な飲食物が合法となる時:
毒性のあるものでないことを条件に、それを摂取しなければ生命に関わるような状況となった場合、非合法な飲食物は合法となります。但しその摂取において、度を越してはなりません。
至高のアッラーは仰られました:-あなた方に禁じられたものは、(イスラーム法に則って屠殺されなかった)死体、(流れる)血液、豚肉、アッラー以外の名において屠られたものである。しかしやむを得ない状態にある者は、(その摂取において)度を越さず、(それを口にするのは、他に合法なものがない場合のみであるという)法を超えない限りにおいて(それを口にしても)罪はない。実にアッラーはお赦し深く、慈悲深いお方である。,(クルアーン2:173)
● 酒類に関して:
1-イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「酩酊を催させるものは、全て酒である。そして酩酊を催させるものは、全て非合法であるのだ。」(ムスリムの伝承[9])
2-ウマル(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「アッラーと最後の日を信じる者は、酒のある席に着いてはならない。」(アフマドとアッ=ティルミズィーの伝承[10])
● 飲酒した者の罰:
1-イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「酩酊を催させるものは、全て酒である。そして酩酊を催させるものは、全て非合法である。現世で酒を飲み、それを止めることも悔悟することもなく死んだ者は、来世においてそれを口にすることがないであろう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[11])
2-ジャービル(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“酩酊を催させるものは、全て酒である。偉大かつ荘厳なるアッラーは、酩酊させる物を飲んだ者に忌まわしい泥を飲ませることをお約束なされた。”(教友たちは)言いました:“アッラーの使徒よ、忌まわしい泥とは何ですか?”(アッラーの使徒は)言いました:“地獄の民の汗、あるいは地獄の民の体液である。”」(ムスリムの伝承[12])
● 酒類において呪われる者たち:
アナス・ブン・マーリク(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は酒類に関し、10種の者を呪いました:それを造る物と造らせる者。それを呑む者とそれを運び、また運ばれる先の者。そしてそれを注ぐ者と売る者、及びその値から利を得る者。それからそれを買う者と、それを買わせた者」(アッ=ティルミズィーとイブン・マージャの伝承[13])
● ナビーズとはナツメヤシの実や干し葡萄などを水に入れ、それによって塩味を抜き[14]、かつ甘みを付けたものです。これについては醗酵したり、あるいは3日以上放置したりしないことを条件に飲むことが合法化されます。
● 人の物を許可なく拝借することが許される場合:
飢えた者が木に生っている、あるいは木から落ちている果樹園の果実を見つけた場合、もしその果樹園に柵もなく、また誰も見ていないようだったら、それを食べてしまうことが出来ます。但しその場から持ち帰ったりしてはなりません。
一方差し迫った必要性もなくそのような物に手をつけた場合、その額の倍の罰金と懲罰が科せられます。
● 非合法な食器や容器で飲食することに関して:
金銀、あるいはそれらが上塗りされたような食器や容器で飲食することは、性別を問わず禁じられています。禁じられた飲食物を摂取している者のドゥアー(祈願)は応えられず、またその体は天国に入ることが出来ません。
● 飲食物の中にハエが落ちた時のスンナ:
アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“(飲食物が入った)あなた方の容器にハエが落ちたら、それを一旦全部沈めてから取り除けるのだ。というのもその一方の羽には癒しが、そしてもう一方には病気があるからなのである。”」(アル=ブハーリーの伝承[15])
[1] 訳者注:詳しくはこの次の主題である「屠殺」の項を参照のこと。
[2] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。
[3] サヒーフ・アル=ブハーリー(5445)、サヒーフ・ムスリム(2047)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[4] 訳者注:大半の学者は4大スナンに収録されたジャービルが伝える真正な伝承を根拠に、ハイエナの肉を食べても問題はないという見解を示しています。
[5] 訳者注:イブン・ウマルは、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がトカゲの肉についてこう言ったと伝えています:「私はそれを食べないが、禁じもしない」(サヒーフ・ムスリム)。
[6] サヒーフ・ムスリム(1934)。
[7] 訳者注:「アル=アズラーム」とは、当時賭け事やくじ引きに使われていた火打石のことであると言われます。
[8] 真正な伝承。ムスナド・アフマド(5723)、スナン・イブン・マージャ(3218)。文章はアフマドのもの。アッ=スィルスィラト・アッ=サヒーハ(1118)参照。
[9] サヒーフ・ムスリム(2003)。
[10] 真正な伝承。ムスナド・アフマド(125)、スナン・アッ=ティルミズィー(2801)。文章はアフマドのもの。イルワーウ・アル=ガリール(1949)参照。
[11] サヒーフ・アル=ブハーリー(5575)、サヒーフ・ムスリム(2003)。文章はムスリムのもの。
[12] サヒーフ・ムスリム(2002)。
[13] 良好かつ真正な伝承。スナン・アッ=ティルミズィー(1295)、スナン・イブン・マージャ(3380)。文章はアッ=ティルミズィーのもの。
[14] 訳者注:マッカやマディーナのある、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が住んでいたヒジャーズ地方は、水の塩分が高く苦味が強いことで知られています。
[15] サヒーフ・アル=ブハーリー(5782)。