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離婚にはイスラーム法に則ったスンナの離婚と、それに反するビドゥアの離婚があります。

    離婚③

    暫定離婚と完全離婚

    ] 日本語 [

    الطلاق3:الطلاق الرجعي والبائن

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    暫定離婚と完全離婚

    1-暫定離婚とは:

    夫が既に床入りを済ませている妻に、1回の離婚宣告を告げることです。この場合望むならば、彼は妻がイッダ(待婚期間)中にある限り、彼女と復縁することが出来ます。そして復縁した後に2回目の離婚宣告をした場合もまた、妻がイッダ中にある限り、彼女と復縁することが出来ます。いずれの場合も妻がイッダ中である限り、彼女は彼の妻であると見なされます。それでその間2人は互いに遺産相続権を有していますし、夫は妻に対して扶養や住居の世話をする必要もあります。

      ●  暫定離婚された女性は、どこでイッダ(待婚期間)を過ごすか?

       結婚後に床入りを済ませたか、あるいは夫と2人きりになった後に1回目、あるいは2回目の離婚宣告を受けた女性‐つまり暫定離婚された女性‐は、夫の家に留まってイッダを過ごします。もしかするとこの期間に、夫と復縁することになるかもしれないからです。

       この間、妻は‐その気があれば‐夫が気を変えて復縁に傾くように、自らを美しく保つようにします。夫は例え復縁の気がなくても、イッダが終了するまで彼女を家から追い出したりしてはなりません。

    2-完全離婚とは:夫婦が完全に離婚してしまうような形の離婚のことです。そしてこれには2種類あります:

    ① 小完全離婚:

    これは3回目の離婚宣告には達してはいない離婚状態のことです。

      前述した通り、夫が妻に1回目の離婚宣告をして復縁しないままイッダが終了した場合、小完全離婚をしたと見なされます。

       この場合元夫には、元妻が自分以外の誰かと一旦結婚してからではなくとも、新たな契約とマハル(贈与財)をもって‐両者がそう望む場合に限りますが‐彼女と再婚する権利があります。

       同様に2回目の離婚宣告をした場合も、復縁しないままイッダが終了した場合、小完全離婚をしたと見なされます。そして1回目の場合と同様に、元夫は元妻が自分以外の誰かと一旦結婚してからではなくとも、新たな契約とマハル(贈与財)をもって‐両者がそう望む場合に限りますが‐彼女と再婚する権利があります。

    ② 大完全離婚:

    これは3回目の離婚宣告をした場合の離婚のことです。3回目の離婚宣告をした時点で、夫婦は完全に別れてしまったことになるのです。

    そして大完全離婚の後は、元妻が元夫以外の誰かと正式な結婚‐つまり前の伴侶と再婚するための手段としての結婚ではない、継続を意図した真の結婚‐をしてまた離婚してからではなければ、その元夫婦が再びよりを戻すことは出来ません。

    そして元妻がイッダを終了した後に元夫以外の男性と結婚し、彼と床入りを済ませた後でまた離婚と相成った暁には、そのイッダが終了してから最初に離婚した元夫との再婚が合法化されます。その際には、新たな契約とマハル(贈与財)をもって‐無論両者が再婚を望む場合に限りますが‐再婚することになります。 

    ● 大完全離婚をされた女性がイッダを過ごす場所:

     3回目の離婚宣告をされた妻は、自分の家族の家で過ごすことになります。というのも彼女はイッダ中に元夫と復縁する機会もなく、また元夫がその期間中に彼女を扶養したり住居提供したりする義務もないからです。

     また彼女はイッダ中、必要以外には家を外出しないようにします。

    ● 夫が自分が妻に離婚宣告をしたかどうか、あるいは自分でつけた離婚条件について疑念を持っているかする時には、その疑念が去るまでとりあえず婚姻状態を維持します。

    ● 夫が妻に対し「自分で(離婚するかどうか)選びなさい」と言った場合、夫がその言葉でもって1回の離婚宣告を意図しない限り、妻はスンナに基づいた形で自らに対し3回の離婚宣告をする権利を獲得したことになります。

    ● 妻が離婚を申請することを許される時:

     妻は、その夫の下ではもはや人生を送り続けることが出来ないほどの被害を彼から蒙った時、裁判官[1]に対して離婚の申請をすることが許されます。その状況とは、以下に挙げるようなものです:

     1-夫が扶養義務を怠っている場合。

     2-罵倒や殴打、辛抱し切れない害悪や悪事の強制などを、妻がその夫とは付き合い続けていくことが出来ないほどのレベルで蒙っている場合。

     3-夫の自分に対するギーバ[2]による害を受け、かつそれによる問題の発生を恐れるような場合。

     4-夫が長期間に渡って拘束され、彼との別離状態による弊害を受けている場合。

     5-夫に不妊症や性的不能、嫌悪感を催させるような病気など法的に考慮される欠陥を認めた場合。

    ● 複数の妻を有する夫に対し、彼を占有するために他の妻を離婚することを依頼するのは禁じられています。

    ● 完全離婚が発生する状況:

     離婚は何らかの代償と引き換えであったり、床入り前の場合であったり、あるいは3回目の離婚宣告のものであったりした場合に完全離婚となります。

    [1] 訳者注:イスラーム法で裁く裁判官のことです。そのような機関が存在しない非ムスリム国や地域に居住するムスリムは、そこにおけるイスラーム的権威である学者やイマームなどに見解を仰ぐことになります。

    [2] 訳者注:「ギーバ」とはその内容の真偽に関わらず、その当人が言及されることを厭うようなことをその陰で話すことを意味します。